「今日この日が、100年、200年、300年後に、『コンピュータがあの日から変わった』」と言われる歴史的な日になる」

 6月5日の記者発表会の場でソフトバンクの孫正義社長が披露した「pepper(ペッパー)」は、計算・記憶など人間の左脳の働きを代替する機能を進化させてきたこれまでのロボットと違い、感情や創造性など人間の右脳の働きに焦点を当てた「感情エンジン」で動くという。

 ペッパーの身長は120センチ程度。人工知能(AI)を搭載し、事前にインストールしたアプリが指定するシナリオに基づき行動する。喜びや悲しみといった感情を数値化し、感謝されたことは「良いこと」、叱られたことは「悪いこと」として学習するため、人の声のトーンや顔の表情などのデータをもとに態度などを変化させ、シナリオに頼らないフリートークも7~8割成立するレベルに達するとされている。

 ペッパーは1台19万8000円で2015年2月から一般向けに売り出されるが、家庭や店舗、会社などで動くペッパーが数値化した感情のデータは、クラウドコンピューティングにより集合知として共有されるため、「空気を読む」能力が加速度的に進化するという。

 また、自我を持ち、それぞれ個別の性格になっていくため、幸せな家庭で育まれるペッパーは幸せになり、寂しい家庭で育てられれば寂しいペッパーになるとのことだが、孫氏は「最終的には愛によって自律行動するロボットを実現したい」と強調する。

知能も感情も人間とロボットは差別化できない

 ロボットの「左脳」面でも画期的なブレークスルーが起こっているようだ。

 ロンドンの英国王立協会で6月7日、スーパーコンピューターの知能をめぐるテストが行われ、「13歳の少年」の設定で参加したロシアのスーパーコンピューターが史上初めて「チューリングテスト」の合格者になった。

 チューリングテストは、第2次世界大戦中の暗号解読者でコンピューター科学の先駆者でもあるアラン・チューリングが1950年に「そのコンピューターに知能があるか」を判断するための試験方法として考案したものである。