自動車を走らせる原動機は、当分の間、少なくともこの先数十年にわたって「内燃機関」が圧倒的多数派であり続ける。

 電動駆動、特に化学電池に蓄えた電力でモーターを駆動する純電気自動車(BEV:Bはバッテリーの意)は、使う場所を狭い地域に限定した道路交通インフラやカーシェアリングなどには多くの可能性があり、またモーターの瞬発力を生かして「ドライビングというスポーツ」を楽しむためのクルマ、いわゆるスポーツカーとしてのポテンシャルは高いけれども、世界の新車販売総量に占める割合は2020年でも2~3%という予測が「かなり楽観的」というのが世界的な(言い換えれば「日本以外」の)認識になっている。

 ハイブリッド動力システムも、電動駆動をかなり多く使う「ストロングハイブリッド」は少数派にとどまり、モーターが適宜「アシスト」に入る使い方で電池搭載量が少ない「ライトな(電動駆動を『軽く』使う)ハイブリッド」が増えるだろうが、それを合わせても世界の新車販売の1割程度にとどまる、と予測されている。

 つまりまだ当分の間、「大量消費される高額な工業製品」としての自動車においては、内燃機関という原動機と、出力回転がある程度上がらないとトルク(回転力)が得られない、という特性ゆえにクルマを走らせるために必ず必要になる変速と発進停止のためのメカニズム、すなわち「トランスミッション」はできる限りの進化を続けてゆくことが求められる。

 特に今は、内燃機関でクルマを走らせる動力システム全般において技術革新が急速に進んでいる。もちろんその核心は、燃料(現状ではまだ化石燃料なので)をいかに有効にクルマを走らせるエネルギーに使うか、という「効率」の飛躍的向上にある。自動車産業の中でそれに追随し、自らが立つ場所を確保するためには、「浅い」机上論や小手先の「改善」でお茶を濁していられる状況ではなく、原理原則に戻って徹底的に考え、世界に一歩先んじる独自の技術を生み出してゆかなくてはならない。

 この原理原則については、このコラムでこれまでも何度か説明してきた。今回、またそこから始めたのは、ぜひ紹介しておきたいメカニズムに出合ったからだ。

 それも、自動車メーカーや大手の部品メーカーではなく、在野の小さなベンチャーが独自の発想をコツコツと開発しているもの。簡潔な構造で変速も瞬時に、かつ自動的に行えて、伝達効率を損なうこともないから、これからも世界の自動車の過半を占め続けるものと予想されているマニュアルトランスミッション(MT: 手動変速機)に取って代わることもあり得る、という画期的なメカニズムである。

日本とは一線を画す世界の技術動向

 ここでもう一度、日本の自動車メーカーの現況に目を向けると、彼らの中では「トランスミッション技術」が失われつつある。そのあたりの事情を、これも以前のコラムと重複するところもあるけれども、ここで解説しておきたい。