このコラムでは、「日本車の『性能』や『品質』はいまだ世界のトップにあり、高い競争力を保っている」と信ずる根拠はもはや失われていることを、現実の製品に触れ、観察し、その資質を検証し続けている筆者の実体験に基づいて、繰り返し指摘してきた。

 それにしても、ここ何カ月かの間に「味見」し、某大学などと共同研究を進めている自動車の動質を検証する計測も行った最新の国産車群は、それぞれに移動空間としての企画・設計・資質の低下が一段と深刻なレベルにまで落ち込んできている。

 その背景を探る中で、日本のクルマづくりのプロセスに大きな弱点が増殖していることが浮かび上がってきた。今回は、あまり知られてないけれども実は日本の自動車メーカーの開発知力・体力を著しく削ぐ方向に進んでいる、この問題について紹介しようと思う。

クルマづくりの中核領域を社外に委託

 日本の自動車メーカーは近年、設計や開発の実作業の「アウトソーシング」化に邁進してきた。

 その始まりは1980年頃、新車を生み出す中で法的規制適合や信頼性向上のための作業量が一気に膨らむ状況の中で、耐久走行試験など「単純な作業だが、人と時間を費やす」作業を「外注」することから始まった。

 当初はその発注先も身近の系列会社や協力会社が多く、完成した製品の資質への影響はなかった。しかし、2000年頃から世間で「アウトソーシング」なる言葉がはやり出すのと軌を一にするように、クルマづくりの中核領域を社外に委託する動きが加速する。