2013年3月7日、ソウル郊外の京畿道平沢(ピョンテク)にある大手自動車部品メーカー、万都(マント)の本社。午前中からあちこちで警察官の姿が目についたという。この日、株主総会が開かれたのだ。

 韓国では12月決算の企業が大半で、3月初めが株主総会のピークだ。3月14日にはサムスン電子、現代自動車、LG電子、ポスコなど全上場企業の6.6%に当たる116社が株主総会を開く。

 万都は一般消費者にはなじみのない自動車部品メーカーで、主に現代自動車と起亜自動車が取引先だ。どちらかと言うと地味な会社の総会だが、韓国メディアも大勢取材に詰め掛けた。というのも、「韓国最大の株主」である国民年金公団が、この日の総会で会社側が提案した代表理事(取締役に相当)副会長の再任に反対する意向を表明していたからだ。

 議決の行方と一般株主の反応がにわかに注目を集めたのだ。

中堅財閥ハルラグループ、建設会社支援に株主から批判

 万都は、韓国の中堅財閥、ハルラ(漢拏)グループの中核企業だ。2013年の連結決算は、売上高が5兆6854億ウォン(1円=10ウォン)、営業利益が3301億ウォンで業績は引き続き好調だ。

 この会社に何が起きたのか。

 それを理解するためには、ハルラグループの歴史を知る必要がある。ハルラグループの設立は1960年代初め。創業者は、サムスングループと並んで韓国最大の財閥だった現代グループを創業した鄭周永(チョン・ジュヨン)氏の実弟である鄭仁永(チョン・イニョン)氏だった。その後国有化された重機械メーカーや自動車部品メーカーの万都などを傘下に持ち、「現代グループの別働隊」として成長した。

 ところが、1997年の「IMF危機」と呼ばれた通貨・経済危機でハルラグループは事実上解体される。これを少しずつ再建したのが2代目の鄭夢元(チョン・モンウォン)現会長(58)だ。

 2008年には1度身売りしていた万都を買い戻し、ハルラグループを再興した。

 ここまでは順調だったが、その後、韓国内の建設不況などの余波で万都と並ぶグループ主力企業であるハルラ建設(現在は、ハルラに社名を変更)の資金繰りが悪化した。

 このため、2013年4月に、万都の100%子会社がハルラ建設の有償増資に応じる形で3385億ウォンを支援したのだ。