また、世界の紛争勃発のおそれがある地域の8~9割が、内陸からの接近よりも海から接近した方が効率的な地域とされているため、戦闘のみならず各種軍事作戦やHA/DRなどの非軍事作戦に先鋒部隊として出動する部隊は、水陸両用能力を保持していなければならない。このため、アメリカ海兵隊は緊急展開部隊としての役割を担っており、「アメリカの911フォース」と呼称されている(北米での電話番号911番は日本の110番と119番に相当する)。

 このように現代のアメリカ海兵隊は、水陸両用能力と陸海空統合作戦能力と緊急展開能力を併せ持った軍隊と言うことができる。

水陸両用作戦と敵前上陸作戦の混同

 さて、陸海空軍事能力を統合して実施される水陸両用作戦は、戦闘活動としての水陸両用戦(amphibious warfare)と、海から接近して実施する水陸両用人道支援・災害救援活動(amphibious HA/DR)とに大別できる。

 有名な硫黄島上陸作戦やノルマンディー上陸作戦といった敵が待ち構える海岸線に無理やり上陸する敵前上陸作戦は、水陸両用戦の中でも危険性が高い「強襲」と言われる作戦形態に分類され、最も危険が高い作戦である。このように敵前強襲上陸作戦は水陸両用作戦のごく一部であり、決して両者を混同してはならない。

硫黄島上陸作戦、日本軍の頑強な抵抗に阻まれ釘付けになるアメリカ海兵隊

 実際にアメリカ海兵隊が近年実施している水陸両用作戦の大半はトモダチ作戦のようなHA/DRである。また時折実施されている混乱地域からのアメリカ市民などの非戦闘員を撤収させる作戦、故障による不時着や撃墜された戦闘機パイロット救出作戦などでは、水陸両用能力がフルに発揮される場合が多い。