再生医療新法について
さらに、再生医療新法により、効果や安全性が確立されていない再生医療は規制されることになる。この法律ができた背景には、我が国では、これまで規制が十分でなかったために医師の裁量権に基づく医療行為の1つとして、一般のクリニック等で再生医療が実施されてきた、という事情がある。
都会では、電車から外を見ると、年老いた肌を蘇らせるという触れ込みで再生医療美容クリニックの看板をみかける。現在、世界には効果も安全性も検証されていない様々な再生医療があふれている。
米国で開催されたIOMとNASが主催したワークショップでは、クリニックで細胞を増やし、シート状にして、美容目的で顔の表面を覆う細胞パックも取り上げられていた。米国をはじめとする多くの先進国では、政府がこれを厳しく規制している。
このような、再生医療が厳しく規制されている先進国では、規制のないあるいは緩い国へ、効果も安全性も検証されていない再生医療を求めて患者が移動する、というメディカル・ツーリズムが生じ、安全面から見て大きな問題とされている。
これまでの日本は、先進国でありながら、再生医療に関する規制の緩い国であり、規制の厳しい韓国などから効果も様々な再生医療を求めて患者が移動して来る側の国であった。
そして、恐れていた通り、京都のクリニックで再生医療を受けた韓国人が帰国した後に急死するという厳しい事例が発生した。
このような事例は、世界から見た日本の再生医療全般への不信感を招くことになり、iPS細胞の実用化に邁進する我が国としては、早急に是正する必要があったのである。
この再生医療新法により新たに規制が設けられたことでそのリスクが低減されるようになった、と言われており、我が国の今後の再生医療の動向が世界的に注目されているのである。