あいにくの雨となった10月5日と6日、NPO「ふくしま再生の会」(再生の会)が飯舘村内でコメの試験作付けをしている、そのサンプル採取と稲刈りが行われた。
飯舘村は現在、農作物の作付けは禁じられているが、再生の会では農水省のガイドラインに沿って村の認可を得、除染効果実証のため佐須、前田、小宮の3行政区で地元農家の協力のもと試験を実施している。
国の直轄事業としての農地除染は、最も汚染度の高い表土5センチを剥ぎ取り、別の汚染されていない土で客土(土を補充)するというもの。客土が赤土か山砂かの違いはあるが、どの農地も同様に処理される。
田畑の土は農家が歳月をかけ手をかけてつくってきた。その表土部分には作物づくりに欠かせない要素が詰まっている。
春、事故以来耕作されない飯舘村の田んぼは暖かくなり始めると同時に雑草に覆われるが、田によってさまざまな様相を見せる。隣り合う田でさえその植生が大きく異なることも珍しくない。土が違うことも要因として大きいだろう。
村内のコメ農家でお宅のコメはうまいですかと聞けば、うちのコメはうまいと自信にあふれた答えが返ってくる。国の進める除染は、うまいコメを作るために手をかけてきた部分をそっくりまったくの別ものと入れ替えてしまう。
一律にそのように処理することが、現状に即した、地元の農家が望む除染なのだろうか。現地を見て、農家の声を聞いて決められた方法なのだろうか。
それとは対照的に、再生の会が毎週のように現地に入り、地元農家と相談し泥まみれになりながら開発した水田除染は、田の土は残したまま土中の放射性物質――より正確に言えばセシウムが固着した土壌成分――だけを取り除く。(ふくしま再生の会「活動報告」参照)
先ごろのNHKの報道によれば9月10日、石原伸晃環境相が飯舘村を含む国の直轄で進める除染事業について、住民の要望が分からないまま一律に処理したことに対する反省の弁を述べたらしい。「市町村の状況に応じて、しっかりと相談してやっていくという形に改め」たいとも述べたという。
これまでさんざん村から出される住民側の要望を無視してきた揚げ句の発言ではあるが、それなら今後除染を進めるにあたって、再生の会のような知見を積極的に検証して除染計画の中に取り込み、机上の空論ではない、実効性を伴う除染へと計画を転換する必要があるだろう。
小宮の田んぼの畦で、サンプル刈り取りの合間に菅野宗夫(かんの・むねお)さんが話してくれた。
「国の責任で(除染を)やるのは当然だけども、その前に住民の声を聞いて、企画立案する部分に住民の声を反映させる、それがなかったらば再生の道はないと思ってんの」
「いま除染ありきみたいな形で進んでっけども、除染やったあとじゃあどうすんだっていったときに、国ではまだ何もれっきとした確たるものが出てこないわけね。おれたちは再生のために、おれたちのこの汚染された地域の、地域の人々の自立を、そして生きがいがある生活をするような方向にもっていってもらわなければダメなんだから、そのための出入り口が除染なんだよね」
「このフィールドに来るってことが大事なんだけども、行政も来てもらわないとダメなわけよ。責任ある人が、ここの地域も見ないで再生の道を探ろうなんつことは何もできないわけよ。ここに来るっつことは住民の声を聞くっつうことなんだよな。そういうふうにしなきゃダメなんだよ」
「住民と一緒にやらないと、形だけの事業だと、おれは最終的には帰村率っていうのはうんと悪くなると思う。住民を、悪い言い方で言えば巻き込んで、いい意味で言えば住民と一緒に、どんな捉え方にしても住民と一緒にやらないとダメなんだ」
「住民とともにやるっていうことが、いままでの事業の中では考えられないものだったんだけども、人間の再生に向けての事業なんだよね。この場合は、住民と一緒に事業をやるっていうことが大事なのな。そういう考え方を国ではいまちゃんと持たないとダメなのな。おれはそう思ってる」
(撮影:筆者)