2013年2月25日に発足した韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権は発足から3週間経って徐々に「正常運転」になりつつある。
それでも、政権初期に最も重要な人事の混乱は続いており、3月18日には韓国で有名なハイテクベンチャー企業の最高経営責任者(CEO)が中小企業庁長内定からわずか3日で辞退することになった。
「株式をすべて売却しなければならないことを知らなかった」――。こんな理由で18日に突然、中小企業庁長への就任を辞退すると発表したのは黄喆周(ファン・チョルジュ)周星エンジニアリング社長(53)だ。
韓国の公職者倫理法によると、一定の地位以上の公務員の場合、3000万ウォン(1円=12ウォン)相当を超える株式を保有していると、全量をすぐに売却するか「白紙信託」しなければならない。「白紙信託」された株式は60日以内に全量売却することになっている。
黄社長は、自らが創業した周星エンジニアリングの株式の25%を保有する筆頭株主で、株式の価値は700億ウォン近くに達する。すべてを売却すると「経営に重大な支障が生じる」として中小企業庁長就任を辞退した。
幻の「目玉人事」に代わる「目玉人事」も頓挫
黄社長は「白紙信託」について、「公職在任中に限って白紙信託し、公職を離れた後にはまた戻ってくると考えていたが、説明をよく聞いたら全量売却するということだった」と説明している。
韓国メディアは、「青瓦台(大統領府)がきちんと説明しなかったから」などと批判している。公職に就くということがどういう意味なのかを、黄社長がもう少し深く考えていればこんな「単純ミス」は起きなかったとも言え、どっちもどっちのお粗末な辞退劇だった。
もっとも、韓国内では「現在の公職者倫理法の規定が厳しすぎて、これでは現職の経営者を重要ポストに起用することは難しい」として、規定そのものを変更すべきだとの主張も出ている。
周星エンジニアリングは最近になって急速に業績が悪化している。株価も2010年7月の2万2392ウォンのピーク時から3分の1以下の急落している。
「黄社長は政府の公職に就きたいという考えがある一方で、業績が悪い時に株式を全量売却して経営から完全に離れることに、創業者として大きな負担感を感じた」(韓国紙デスク)という見方もある。
黄社長は、韓国では有名なハイテクベンチャーの創業者だ。貧しい家庭で育ち、兄と姉が学費を出してくれて工業高校を卒業する。その後、2年制の専門大学と4年制の大学に苦学して進んだ。