3月は韓国のほとんどの上場企業で定例株主総会が開かれた。大半の企業は「安定株主」を確保しており、大きな波乱はなかったが、一皮めくると企業やオーナーの苦悩が見え隠れする。世界経済の低迷と「経済民主化」を掲げる新政権の誕生への対応に揺れるオーナーや経営者たちの姿が浮き彫りになった。
3トップ体制に転換するサムスン電子
元気いっぱいだったのが、2012年に過去最高の業績を更新したサムスン電子の株主総会だった。3月15日の株主総会で議長役を務めた権五鉉(クォン・オヒョン)副会長(60)の発言はいつもと同じ強気のトーンだった。
「携帯電話機、テレビ、メモリー半導体などの主力事業をさらに強化するうえで、生活家電やプリンター、さらに医療機器など新規分野を育成して昨年を上回る実績を上げられるように努力したい」と力強く宣言した。
サムスン電子はこの日の総会で、権副会長に加えて尹富根(ユン・ブグン)消費者家電(CE)部門社長(60)と申宗均(シン・ジョンギュン)IT無線(IM)部門社長(57)を登記理事(取締役に相当)に選任した。
また、総会後の理事会でこの3人をそろって代表理事に選んだ。半導体(DS)部門を担当する権副会長に加えて、CE部門とIM部門を担当する社長にも代表権を持たせ「3トップ体制」に転換する。
企業の規模が急成長しているうえ、セット(完成品)部門と部品部門で利益の相反も起きており、同じ会社ではあるが、3人がそれぞれの部門の責任者として経営を進めることになる。会社を3つに分けて意思決定のスピードも維持しようという狙いだ。
サムスン会長親子は理事にならず
韓国メディアの一部では、李健熙(イ・ゴンヒ)会長(71)の長男である李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長(44)が代表理事に就任するという見方もあった。ただ、今回も就任せず、李健熙会長と李在鎔副会長の親子は「別格の存在」であることを印象付けた。
とはいえ、サムスングループのオーナー家から登記理事が出ていないわけではない。李健熙会長の長女である李富真(イ・ブジン)ホテル新羅社長(42)は、代表理事として今年も株主総会で議長役を務めた。