肥満大国アメリカに納豆を売り込め!

カリフォルニアで日本でも消えつつある本格手作りにこだわる

2010.06.14(Mon)森 マサフミ
カップに豆を入れる。すべてが社長の佐藤さんも含めた3人の手作業

 フードコラムニストのハロルド・マギーさんは、2009年11月付ジャパニーズ・レストラン・ニュース紙上のインタビューで「MegumiNATTO」について、「今まで食べたどの納豆よりもおいしいと感じた。繊細な香りと食感に加え豊かな風味がある。その香りはコーヒーにさえ似ている」と高い評価を与えている。

 JTF社には、オンラインで納豆を買った消費者から「アイ・ラブ・ユア・ナットー」といった喜びの声が多数寄せられている。地元コミュニティーマーケットの仕入れ担当テス・ハーマンさんは「週に10パック程度が売れる。これからも継続して仕入れたい」と前向きなコメントをしている。

発酵室から出る納豆

 佐藤さんの分析によれば、納豆がクセのある食べ物だと先入観を与えられた人ほど、その香りとネバネバに嫌悪感を示すという。つまり、日本人が「これって日本人でも食べられない人がいるんだよ」「臭いが強くて、きっと好きになれないと思うよ」などとネガティブな情報を吹き込むから、身構えてしまうのだ。「多くのアメリカ人は納豆のことを全く知らない。だからこそチャンスがある」と、佐藤さんは強調する。

日本食材を世界に広めたい

 東京近郊で生まれ育った佐藤さんは、慶応大学卒業後に渡米、1983年、アリゾナ州の大学でMBA(経営学修士)を取得した。帰国して外資系の会社に勤務した後、いったんは家業である鉄鋼製品の問屋を継いだ。

 しかし、「いつか米国で起業したい」という夢があったことや、日本でも食料自給率や食品添加物、食の安全などが大きな話題として取り上げられるようになり、2004年に、日本食材の海外市場への販売をサポートするコンサルタント業務を始める。2005年には、小規模ながら、こだわりの製法と味の良さで納豆通にはよく知られていた矢口納豆製造所(現やぐちフーズ、さいたま市)に資本参加(その後2007年に買収)、納豆作りにかかわるようになった。

納豆の食べ方を実演するジャパン・トラディショナル・フーズ代表、佐藤南さん

 市場調査を進めるうちに、日本では当たり前のチルド納豆が、米国ではほとんど手に入らないことを知る。「冷凍では納豆本来の良さが伝わらない」と主張する佐藤さんは、現地生産によるチルド納豆の販売を実現したいと考えるようになった。

 同じころ知人から、米国で初めてシイタケ栽培に成功したマルカム・クラークさんを紹介され、米国進出にあたってのアドバイスを受ける。その結果、クラークさんが創業したグルメ・マッシュルーム社の所在地でもあるカリフォルニア州ソノマ郡のセバストポールに、納豆工場を設置する決意を固めた。

 ソノマは隣接するナパと並び、世界的にも有名なワインの名産地。周辺にはたくさんのワイナリーがあり、自然食志向が強い。また1960年代、近郊のサンフランシスコを中心にヒッピー文化が栄えた影響で、北カリフォルニア一帯には新しいものを積極的に受け入れようとする気風がある。全米でこれほど納豆を売りやすい地域はないと言えよう。

 “アメリカで納豆を普及させる”という一見無謀にも思える佐藤さんのビジネスには、案外追い風が吹いているようだ。まだ挑戦は始まったばかりだが、ハリウッドのセレブが糸を引きながら、ちょっと気取って納豆をかきこむ・・・そんな日も遠くないかもしれない。

 そして、米国の納豆ブームが再び、日本へと戻ってくることが佐藤さんのその先の夢だ。「日本では、大手メーカーの大量生産大量供給の特売合戦に敗れ、中小の納豆屋がどんどんつぶれている。それぞれの地域で独自の納豆作りをしているメーカーが消えていくのは、とても残念」と佐藤さんは嘆く。「本物の納豆を食べるには、ソノマに行け」などとならないように、我々日本人も長年の知恵と伝統の食文化を、もう一度、見直す必要がありそうだ。

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