肥満大国アメリカに納豆を売り込め!

カリフォルニアで日本でも消えつつある本格手作りにこだわる

2010.06.14(Mon)森 マサフミ
蒸した大豆に納豆菌を散布する作業。1つ1つの工程が手作業で行われる

 JTFでは、毎日12升の大豆を炊くところから、すべての工程を手作業でこなす。日本のスーパーで3パック100円前後で売っている大量生産商品では考えられないような手間ひまを掛けて、1日700パックを生産する。

 毎月の売り上げは5000ドル程度。店頭価格は、1パック85グラムの「Megumi」が約3ドル(273円、1ドル=91円)、3パック入り計120グラムの「手づくり納豆」が約4ドル(364円)。通販では1箱20パック入り「MegumiNATTO」を56ドル(5096円、送料別)で販売している。工場建設など、創業に当たって約40万ドル(3640万円)を投資した佐藤さんは、2011年までに採算レベルに乗せることを当面の目標にしている。

一体どうすればアメリカ人に納豆が売れるのか?

 「MegumiNATTO」の発売前に、佐藤さんは何度か米系スーパーの店頭や食品関係のイベント会場に足を運び、試食品を配った。意外なことに、嫌悪感を示した人は1割程度だけ。ほとんどの人が、すんなり受け入れたという。

 「これまでアメリカ人が納豆を食べなかったのは、存在を知らなかっただけのこと。ほんの20~30年前のアメリカ人には生の魚を食べるなど考えられないことだったし、豆腐なんてほとんど誰も知らなかった。それが今では、すっかり市民権を得ている」。佐藤さんは、食文化に合わせたアプローチによって納豆の良さを伝えれば「必ず売れる」と確信したそうだ。納豆の食べ方を説明するビデオを制作し、映像共有サイトYouTubeに公開している。

 米国社会に対して一番の訴求ポイントとなるのは、納豆の栄養価だ。とりわけ、血液をサラサラにする酵素ナットウキーゼが豊富に含まれている点をアピールすれば、豆腐や枝豆と差別化できる。

 成人の3分の2以上が太り気味で死因の第1位が心臓病という米国では、動脈硬化など循環器系の病気が深刻な問題となっている。日本以上に納豆の健康パワーが効果を発揮する可能性がある。佐藤さんは、単なるブームとしてではなく、長年培われてきた日本人の伝統と知恵も含めて、日本食の奥の深さを米国市場に伝えたいと考えている。

 USDAオーガニック認定の取得は大きな切り札になる。これによって、ホールフーズなど自然食に力を入れたスーパーのチェーンに売り込みやすくなるからだ。先ずは、こうしたオーガニック系のスーパーで買い物をする健康志向の高い女性層から切り崩していくのが、佐藤さんの戦略だ。

佐藤さんが考案した納豆トースト。マヨネーズとカレー粉ひとつまみを加えるのがコツ

 そのため、佐藤さんは納豆を使った様々なレシピを考案した。JTF社のウェブサイトには、ごはんに載せるシンプルな食べ方とともに、色鮮やかな納豆トマトブルスケッタ、ミントの葉を散らした納豆フライドライス(チャーハン)、コロンと可愛らしい形をした納豆フリッターなど、目にも楽しく、米国の食文化に合わせたメニューが、写真付きでずらり20点以上も並んでいる。忙しい合間を縫って、スーパーの店頭やイベントでの試食会も積極的に実施している。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る