これまでの3回(1)(2)(3)は、治療に使われる内観療法について説明してきたが、内観療法の最終回となる今回は、健康なビジネスマンやトップアマ、プロのスポーツ選手などにとっても役立つ内観について話を聞いた。
――今まで詳しく内観についてお話を聞いてきましたが、内観療法を含め、内観はどのようなケースで用いられ、どういった症状の改善が多いですか?
本山 あらゆることです。これまでお話ししてきたような精神療法としても、あるいは家庭問題や人間関係の改善、メンタルヘルスとしても有効です。さらに自己啓発や企業研修、スポーツ選手のメンタルトレーニングにも用いられています。
――ビジネスマンは、どういう目的が多いですか?
本山 企業研修が多いです。内観をするということは、様々な事実に自分で気づく練習をすることなので、物事に対して反応がよくなります。能力開発的な意味合いが強いですね。
アスリートのメンタルトレーニング
――スポーツ選手は、どうですか?
本山 ここ一発という時に力を出すためのメンタルトレーニングとしてよく用いられています。例えば北京オリンピックで金メダルを取った日本の女子ソフトボールチームもそうでした。
そのチームメンタルトレーニングのコーチが、オリンピックに出発する前に、選手全員に「お世話になった人」のところに挨拶に行かせたのです。ピッチャーとして有名になった上野由岐子選手は、亡くなった高校時代の監督の墓参りに行ったそうです。
なぜ、こういうことをさせたのかというと、ものすごいプレッシャーと緊張の中で力を出すためには、自分を信じることが必要だからだそうです。自分を今まで支え応援してくれた多くの人の思いを感じることができれば、プレッシャーを押しのけて、自分を信じることができるようになると言うのです。
最近、世界で活躍するアスリートのインタビューを聞いていると、ある共通したものを感じます。それは「応援してくれた人、支えてくれた人に感謝したい」という趣旨のコメントが多いということです。