前回は、軽いうつ病が激増していることに触れたが、今回は、治療法を中心に詳しく見ていこう。取材先は、心療内科の分野で最も早くから臨床に携わってきた平木クリニックの平木英人院長だ。
血液検査でうつが分かる時代が来る?
――治療の流れを教えください。
平木 来院されたらまず症状についてじっくりと話を聞きます。さらにインテークインタビューと呼ばれる初回面接と、心理テストを行います。心理テストとしては、抑うつ度の度合いをチェックする「SDS」、患者さんの心の状態をチェックする「POMS」、心の中の自我状態を調べる「エゴグラム調査票」など5種類ほど受けてもらいます。
――数値や画像データなど、何か客観的なものでうつ病と判断する検査法というのはないのでしょうか?
平木 厚生労働省の研究班が今、研究を進めています。注目しているのは白血球の遺伝子です。実は、白血球の遺伝子はストレスによって変化することが分かっています。
このことに着目して、免疫や神経伝達物質に関連する24の遺伝子がうつ病患者とそうでない人では違った反応をすることが突き止められたのです。今後実用化できれば、血液検査だけでうつ病を診断できるようになります。
――体の検査もありますか?
平木 もちろん行います。心療内科は心と体の両方から治療する科なので、内科の検査は必ず実施します。血液検査、尿検査、血圧検査などを行い、器質的疾患の有無をチェックします。
体と脳を解放する
――うつと判断されれば治療が始まるわけですが、どのような治療になりますか?
平木 薬と休養です。この2つが大きな柱です。
――休養がやはり大事なんですね。
平木 休養が取れないと、薬もなかかな効きません。
――サラリーマンであれば、会社に事情を話して相談しながら、一定期間休みを取るのが最も望ましいですね。
平木 そうです。ただ、こういうご時世ですから、休んだらリストラに遭う危険性もあるわけです。そうなるとますますストレスが大きくなる。
だから、どうしても休めない場合には、できるだけ仕事の量を減らしたり、上手に手を抜いたり、夜のつき合いなどを減らすなどの工夫が必要になってきます。臨床の場というのは、なかなか教科書どおりにいかない難しさがありますね。