ちなみに、日本の場合は盲腸手術で1週間入院して約38万円です。そして、通常の入院であれば1泊2~3万円程度。自己負担はその3割です。細かな差を差し引いたとしても、医療の値段を公的に管理している日本では治療費が1ケタ安く提供されているのが分かっていただけるのではないでしょうか。
健康保険が「公的」でなくてはならない理由
医療の値段(点数)を公的に決めるだけでなく、保険制度そのものを公的に行うことにも、大きなメリットがあります。公的でない保険は営利を目的としている以上、極めてシビアな対応をするからです。
私は、かつて某外資系の自動車保険に加入していました。2年の間に、こすったバンパーの修理2回とロードサービス(バッテリー上がり2回)に保険を使用したら、翌年度の自動車保険契約を拒否されました。その2年間については、私が払った保険料以上に保険会社に支払わせてしまったのは事実ですので、当然なのかもしれません。
これを健康保険に置き換えてみるとどうなるでしょうか? よくある場合で、大腸がんの手術を受けて、その後、抗がん剤治療が必要になったとします。もちろん大腸がん手術だけで1カ月の入院費用は100万円を超える金額になり、その後の抗がん剤治療も必要な場合、月々20万円近くかかります。
この場合でも、公的健康保険が整備されている日本では高額療養費制度があるため、自己負担金額は月額9万円を超えることは滅多にありませんし、長期にわたる場合には1カ月4万5000円まで自己負担上限額が下がります。
しかし、民間保険会社が契約を請け負っていた場合、このような契約はあり得ないでしょう。手術後1年経った段階で翌年度の健康保険契約を拒否されるかもしれませんし、また、健康保険契約を継続してもらえるにせよ、翌年度保険料大幅アップは営利企業であれば当然の選択です。
米国においては、人口の16%に当たる約4600万人もの人たちが、高額な医療費をカバーする保険料が高額すぎて無保険状態なのです。
その上、にわかには信じ難いかもしれませんが、既往歴の治療には保険が使えないのです。高血圧の人は医療保険に加入できても、高血圧の薬や治療には保険が適応されません。これも営利を追求する以上は全く当然の処置なのでしょう。というわけで、医療保険に加入できていても、実際に治療を受けることができていない人たちが大勢いるのです。
医療保険そのものを公的に提供する必要性が分かっていただけるのではないでしょうか?