先日、中国民族系自動車メーカーの生産・開発現場を訪問した。今回は、その時に見た現場の様子と筆者が感じたことを述べてみたい。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国の自動車市場を比べると、その大きな違いは、その国固有の民族系自動車メーカーが存在するかどうかである。マレーシアには「国民車」構想で注目を集めた自動車メーカー、プロトンがあるものの、経営は青息吐息。タイやベトナムなど他ASEAN諸国は、外資企業同士が争う構図である。

 一方、中国には日韓欧米の外資企業に加えて、ローカル資本の民族系自動車メーカーが乱立するのは周知の通りである。

 中国の民族系自動車メーカーは、ロシアなど新興市場への輸出も積極的に行っている。昨年、筆者はロシアを訪れ、ロシアの国産車と中国車を見比べた。あくまで主観だが、中国車の方が出来は良いように思える。

 詳細はここでは省くが、ロシアの自動車市場は西側、中央、極東でその市場特性が異なっている。例えば、モスクワやサンクトペテルブルクといった大都市を擁する西側(いわゆるヨーロッパ・ロシア)では、高級乗用車の市場が確立しており、外資が競って進出してきた。極東に行くと、日本の中古車が圧倒的なプレゼンスを占める。

 ヨーロッパ・ロシアで見ると、ロシア車の競合は中国車となる。ヨーロッパ・ロシアの市場は、日欧米メーカーが高級車で競うセグメントと、中国およびロシアが低価格で競うセグメントに大きく二分できると言ってよい。

 つまり、ロシア車にとっての脅威は、日欧米メーカーでも韓国メーカーでもなく、中国メーカーである。筆者の滞在期間は短かったものの、サンクトペテルブルクの街を歩いていると、奇瑞の自動車をよく見かけた。

 日本人から見て、中国車については、品質やデザインその他もろもろについて様々な意見があるだろうが、中国やロシアのような新興市場では低価格車としてのプレゼンスは無視できない。

先端的な設備を揃える国有企業の工場

 民族系自動車メーカーを分析した資料は多々あるので、詳細な分析はそちらにまかせるとして、ここでは筆者が2009年9月に民族系A社、B社の工場を訪れた時の様子を取り上げてみたい。

 両社ともに国有企業であり、政府系資金をベースとする。ともに立派な社屋、工場を建てている。生産設備も非常に高価なものが配置されている。我々が過去に伝え聞いたり、書物で読んだような、「貧相」な国有企業の姿は、そこにはない。

 A社の工場のトリム(内外装部品の取り付け)現場を見学した。ラインの間口はすっきりしている。以前、中国の地場民間資本の液晶テレビメーカーの組立現場を訪れたが、間口は部品であふれ、空の梱包材がラインの横に放置されている所もあった。「この組立現場では、まずは3S(整理・整頓・清掃)などの基本を徹底することが必要だな」と感じたものだ。他方、A社のライン周辺は、すっきりしている。

 部品は多頻度・小ロット・後補充でパレットに配膳し、ボディーと同期させて無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicles)やコンベアで流す。いわゆる「SPS(セットパーツシステム)」である。従来は作業者がライン周辺の部品棚から部品を取り出して、組み立てをしていた。SPSでは、前もって部品を用意しておいて、必要とするラインに送り届けるのである。つまり、部品選別作業を組立作業から分離するというわけだ。