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 斜陽産業の典型とも言われる繊維産業。だがその中で「繊維は斜陽産業なんかじゃない」と意気軒昂な企業がある。単なる強がりではない。その企業は実際にオンリーワンの技術を武器に着実に成長を続けている。福井県鯖江市に本社を構える冨士経編(ふじたてあみ)だ。

 従業員数は約40人。繊維業界に逆風が吹きつける中で、ここ数年の間、毎年15~20億円の売り上げを保ち、2~3億円の利益をたたき出している。2007年には、約7億円の建設費を投じた新工場を稼働させた。

 目を見張るのが88.5パーセント(2007年末時点)という自己資本比率の高さだ。野尻利雄社長のモットーは「安全堅実な経営」。8年前の社長就任以来、利益率を高め、自己資本比率の改善を図ることに全力を傾けてきた。その優良経営ぶりには、取引先の銀行も感嘆するほどだ。

厳しい逆風が吹く福井の繊維産業

冨士経編(福井県鯖江市)の本社

 日本で繊維産業の衰退が叫ばれて久しい。かつては輸出品の要として高度経済成長を支えてきたが、今やその面影は見られない。現在、日本国内で販売される衣料の8割以上は、中国や東南アジア諸国からの輸入品である。

 縫製、紡績、テキスタイルなど、様々な工程において日本の繊維産業は空洞化しつつある。その影響をまともに食らっているのが日本各地の繊維産地だ。古くから絹織物で栄え、戦後は合繊の産地として全国に知られた福井県もその例にもれない。県内で繊維産業に携わる事業者数は、1995年には約3000あった。それが2005年には約1600にまで落ち込んだ。10年で半数近くの減少である。また従業員の数も、同じ10年間で約3万2000人から約2万人へと4割近くも減ってしまった。

冨士経編の野尻利雄社長

 このように福井県の繊維産業は非常に厳しい状況に置かれている。だが、冨士経編の野尻利雄社長の目にはまったく違う景色が見えている。

 冨士経編の利益の源泉は、商品開発力にある。財務面では「安全堅実」を標榜しているが、商品開発面では攻撃の手を緩めない。オンリーワンの技術に磨きをかけて、価格競争にできるだけ巻き込まれないようにする。また、中国メーカーにどれだけ模倣されようとも、常に新しい商品を開発し続けて、相手の先を行く。こうした努力の積み重ねによって、逆風をはね返しているのだ。

半袖ワイシャツのブームで事業が軌道に

 同社が生産するのは、ニットガウンや浴衣、業務用ユニフォーム、作業服といった衣料品と、そうした衣料品向けの繊維生地である。それらの製品のほとんどを、社名にもなっている「経編(たてあみ)」という製法で作り上げている。