米国の名門大学に留学する中国人は非常に多い(写真はスタンフォード大学、Toshiharu WatanabeによるPixabayからの画像)

1.日本人の戦争反対意識の強さ

 日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を授与された。

 核廃絶という問題にとどまらず、世界中の人々が改めて戦争の残虐な非人道性を心に刻んだはずである。

 戦争は無差別殺人である。

 このことを最も象徴的に思い起こさせるのが広島・長崎の原爆投下だ。

 今回のノーベル賞受賞を機に、核兵器による大量殺戮のみならず、すべての戦争による犠牲者を悼み、戦争そのものに反対する意識を高めることこそ重要である。

 日本は憲法において戦争放棄を謳っており、核兵器の使用のみならず、戦争に反対する姿勢を明確に示している。

 それは日本国民一人ひとりの心に深く浸透しており、海外の有識者が想像する以上に日本人の戦争に反対する意識は強い。

 米国で台湾有事に際して日本参戦の可能性を議論する時などにそうした意識の違いを感じる。

 2017~20年にかけて実施された第7回世界価値観調査(対象は18歳以上の男女)の結果によれば、「戦争になったら進んで自国のために戦うか」という問いに対して、「はい」と回答した日本人の比率が世界の中で飛びぬけて低かった。

 調査に参加した77か国のうち、ベトナム、中国など上位10か国は85~96%が「はい」と回答した。

 日本以外の下位10か国は34~42%。日本は最下位の77位で13.2%だった。

 これは日本人の愛国意識が低いことを示しているのではないと筆者は考える。

 実際に日本が何らかの理由で戦争に巻き込まれて肉親や多くの親しい友人が戦争の犠牲になれば、日本人の意識が変わる可能性は高いと思われる。

 しかし、第2次世界大戦終了後79年間も平和が維持されている現状において、日本人の戦争に反対する強い想いがこの調査結果に表れている。

 いかなる理由があろうとも戦争という手段に訴えて国際問題を解決しようとする考え方は間違っているというのが大部分の日本人に共有されている理念となっているのではないだろうか。

 その理念の形成には、広島・長崎の原爆投下の被害者であることも大きく寄与していると考えられる。