資源開発から安全保障および戦略的同盟の形成へ劇的にシフト

 イヴァノフ博士は西側が北極圏の潜在力を活用し、中国への依存を減らすために以下の4点を提言している。

(1)同盟間の協力強化:強圧的な手法を避け、多国間での協調的な枠組みを通じて資源を確保する。

(2)早期かつ実質的な投資:鉱山開発には十数年を要するため、探査段階からの早期の資金投入を行う。

(3)敵対的影響力の排除:中国やロシアによる政治・経済的浸透に対し、西側が連携して対抗し続ける。

(4)規範の順守:高水準の環境保護、労働権の尊重、先住民族コミュニティーとの合意形成を徹底し、西側の価値観に基づいた開発を行う。

「ハイ・ノース」を巡る議論は資源開発から安全保障および戦略的同盟の形成へ劇的にシフトした。中国の「氷上のシルクロード」停滞とグリーンランドの事例は西側が結束して行動すれば、中国の足がかりを最小限に抑えられることを教えてくれる。

 西側がこの機会を逃さないカギはトランプ氏流の強圧的リアリズムを排除し、共通の価値観に基づいた確固たる団結を維持できるかにかかっている。時間の猶予はない。北極圏を西側の強靭性の源泉とするための行動を今すぐ開始しなければならないとイヴァノフ博士は警告する。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。