北極圏において圧倒的な優位性とプレゼンスを誇るロシア
脅威は中国だけではない。北極圏においてロシアは圧倒的な優位性とプレゼンスを誇る。世界最大の砕氷船艦隊を保有し、北極圏に40以上の軍事施設を構える。これに対し、ベネズエラ、イランと武力行使を拡大するトランプ氏の強圧的な姿勢は西側の団結を損ねている。
イヴァノフ博士の報告書には興味深いエピソードがいくつも盛り込まれている。21年のグリーンランド自治議会選は「鉱山選挙」と呼ばれるほど、資源開発の是非が争点化した。選挙の結果、ウラン採掘反対を掲げた環境派政権が誕生した。
新政権は、13年に解禁されたばかりのウラン採掘を即座に禁止する法律を可決させた。資源の重要性がいくら増しても民主的な手続きと地元住民の合意がなければ、開発計画は一夜にして白紙になり得るリスクを西側に知らしめる象徴的な出来事となった。
ノルウェー北端にある小さな町の町長の体験は中国の極北への執念を物語る。23年に町長に就任すると3つの中国代表団が立て続けに訪ねてきた。不動産の買収、インフラプロジェクトへの関与、地域における恒久的なプレゼンスの確立が狙いだったが、町長は誘いを断った。
ノルウェー北部の町ハンメルフェストは、世界最北の不凍港で、沖合には世界最北のガス田もある。付近には大規模な銅鉱床が確認されているほか、海底鉱物資源についても有望視されている(写真:ロイター/アフロ)