イスラム諸国でもアメリカに対する反発が強まっている。イランに近いヒズボラ、ハマス、フーシなどは当然だが、パキスタン、インドネシア、マレーシアなどでも、反米の動きが広まっている。
さらに、世界経済、アメリカ経済への悪影響も既に出ている。イランはホルムズ海峡を閉鎖したと主張し、多くの船舶の自由航行が妨げられている。原油やLNGの価格が上昇し、物価高を昂進させる。アメリカでガソリン価格が上がれば、国民の不満は爆発する。戦争が長引けば長引くほど、その危険性は高まる。
無言の高市首相
ヨーロッパの主要国は、今回の戦争に対して、自らの立場を鮮明にしている。イスラエルやアメリカによる奇襲攻撃を国際法違反として厳しく非難している。
スターマー英首相は、自国の基地を米軍の第一波攻撃に使うことを拒否した。その後、戦火が中東に拡大したため、基地使用を認めた。イラク戦争での誤りを繰り返してはならないとも述べている。イラク戦争については後述する。
スターマーは、「イギリス軍基地の使用は、英米が合意した防衛目的に限られる。アメリカとイスラエルによる先制攻撃に、私たちは参加しない」と述べた。さらに、「この政府は空からの体制転換をよしとしない」とも言っている。
マクロンは、今回のイラン攻撃は「合法性がない」と断言し、即時の停戦と対話を訴えた。
一方で、イギリスやフランスは、中東地域に自らの権益を保有しているので、それを守るために軍事力を展開し、イランの反撃に対抗している。マクロンは、「外交的解決を追求しつつ、軍事的にはフランスの利益と地域安定のために必要な最小限の自衛的介入を行う」と述べ、空母シャルル・ド・ゴールを地中海に派遣している。
スペインのサンチェス首相は、アメリカを厳しく批判し、「人類の大惨事はこうして始まる。数百万人の命を賭けたロシアンルーレットは許されない」と訴えている。これに対して、トランプはスペインとの「全ての貿易を止めるつもりだ」と脅しているが、サンチェスは「報復を恐れて、われわれの価値観や利益に反する行為に加担しない」と明言している。
これらの欧州首脳とは対照的に、高市は今回の奇襲攻撃について、ほとんど沈黙を守っている。3月19日に訪米し、トランプと首脳会談を行うことが念頭にあるのだろうが、外交に弱い高市の失態である。これでは、日米首脳会談を行う意味はあまりない。
昨年10月、来日したトランプ大統領と元赤坂の迎賓館で握手を交わす高市早苗首相(写真:共同通信社)
日本は、西側諸国の中でも、最もイランと緊密な国である。その外交上の強みを生かさないのは残念である。本来は、日本がアメリカとイランの仲介役を買って出てもよいくらいなのである。
2019年6月、日本の首相として41年ぶりにイランを訪問した安倍晋三首相は、最高指導者ハメネイ師と会談。安倍氏はトランプ大統領からのメッセージを伝えたいと申し出たが、ハメネイ師は安倍氏の善意を認めながらも、これを拒否したと伝えられている(提供:Office of the Iranian Supreme Leader/AP/アフロ)
カナダやオーストラリアは、地理的に中東から遠いこともあって、いち早くアメリカ支持を打ち出している。
今回の高市の対応は、台湾有事発言に続く大失敗である。