ウクライナだけにこだわっていられない欧州とロシア
ウクライナ情勢を巡って決定的な対立に陥った欧州とロシアであるが、イラン情勢の緊迫化が長期化すれば、是々非々での対応を迫られることになると考えられる。中東の不安定化は、欧州とロシアのみならず、中国やインドにも跳ね返る問題である。米国への信頼が大いに揺らぐ中で、大国間で現実的な歩み寄りが生じるかもしれない。
体制がガタついたこともあり、イランによる武力行使には限界がある。ゆえに、ホルムズ海峡の事実上の封鎖も、そう長くは続かないというのがメインシナリオになりそうだ。
とはいえ、そうした情勢の収束はあくまで一時的な安定に過ぎず、本格的な安定化までの道のりは程遠い。中長期的に情勢の緊迫化が蒸し返されるリスクもある。つまり、イランも“アラブの春”の二の舞に陥りかねないわけだ。
それを回避させるためには、関係する周辺の大国が現実的な観点から歩み寄る必要がある。こうした観点からも、イラン情勢の緊迫化を契機にウクライナを巡って決定的な対立に陥ったEUとロシアの関係が徐々に変化していく可能性について、注目したいところである。
※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です
【土田陽介(つちだ・ようすけ)】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)、『基軸通貨: ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)がある。