イラン情勢の混迷はロシアにとって福音か
他方で、イラン情勢の緊迫化はロシアにとってどのような意味を持つのか。経済面では、原油価格の上振れは、産油国であるロシアにとって間違いなく追い風だ。それにロシアとイランは中国のエネルギー市場では競合関係にある。ホルムズ海峡の封鎖で中国がイラン産原油を調達できなくなる意味は、ロシアにとって極めて大きい。
ただ、中国もイランに対して影響力を行使できる立場にある。自国のエネルギー価格の急騰だけではなく、ロシアの交渉力の向上も回避したいところだろう。ホルムズ海峡を封鎖するにしても短期にとどめるよう、中国がイランに要請する展開が視野に入る。ロシアの“原油高ボーナス”はそう長く続かないのがメインシナリオではないか。
とはいえ政治的には、ロシアにとってイラン情勢の緊迫化は頭痛の種である。ロシアはイランと密接な関係にあるが、ハメネイ師ら指導部が一掃されたことで、今後の関係に暗雲が立ち込めるようになった。極言すれば、ロシアはシリアに次いでイランまでも失ったことになる。海を隔てれば、ロシアはベネズエラとの友好関係も失っている。
イランに今後、どのような政権ができるかは分からない。仮に親米政権が成立しても、米国がいつまでもイランに関与するか定かではない。となると、中東情勢は一段と緊迫感を強める。その政治的・経済的コストを負えるほど今のロシアに体力はない。こうしたコストに鑑みれば、ロシアが得る原油高ボーナスなどたかが知れたものだ。