EUがロシア産LNGの輸入を増やす可能性

 この情勢を欧州の文脈で紐解くと、やはりLNGとの関係が重要になる。欧州連合(EU)は、再エネの普及と化石燃料の脱ロシア化をエネルギー戦略の二本柱に掲げる。うち後者の観点から、EUはカタール産LNGに対する関心を高めてきた。ただ、今のところカタール産LNGがEUの天然ガス輸入量に占める割合は限定的だ。

 EU統計局(ユーロスタット)によると、2025年末時点でEUが輸入する天然ガスに占めるカタール産LNGの割合は2%程度(図表1)。とはいえこれは輸入総量であり、再輸出分も含まれていることから、域内での利用量に限定するとカタール産LNGの割合が上振れする公算は大きく、今般の情勢次第でEUのガス価格も急騰しよう。

【図表1】EUの天然ガス輸入量の国別内訳(月次、総量) (注)3カ月移動平均 (出所)Eurostat

 今後、EUはホルムズ海峡の封鎖の長期化を睨みつつ、ノルウェーやアルジェリア、米国といった国々からのガス調達を強めたいところである。しかし、各国とも供給余力に限界があるため、カタール産LNGからのスイッチングが巧くいくか定かではない。ここで意識されるのが、EUによるロシア産LNGの輸入が増える可能性である。

 EUは2025年12月、ロシア産ガスの輸入を2027年11月までに禁じる意向を示した。これまでもEUはロシア産ガスの輸入削減に努めているが、いわゆるシャドーフリート(影の船団)を通じたロシア産LNGも輸入されている。ガスを安く得たいEUの事業者と、外貨を得たいロシアの事業者との思惑が一致したためだ。

 EU域内のガス価格が上振れすれば、リスクを負ってでもロシア産LNGを調達する方がEUの事業者は利ザヤを稼ぐことができる。それは、外貨を得たいロシアの事業者にとっても同様だ。EUが脱ロシアの号令を鳴らしても、ホルムズ海峡の封鎖が長期化されるなら、シャドーフリートによるロシア産LNG輸送の機会が増えるだろう。