ウクライナ侵攻で弱まったロシア軍
ウクライナ参謀本部の発表資料によると、ロシア軍はウクライナ戦争を開始してからこの4年間で、兵員約126万人、戦車約1万2000両、火砲3万8000門、ヘリを除く軍用機約440機の損失があった。
損失126万人というのは、地上軍126個師団分に換算され、2000年頃の地上軍の全勢力に相当、ウクライナ戦争前の約40個師団の3倍の数量である。
これは、第1線部隊では現役兵がほとんどいなくなり、補充兵主体で戦っていることを示している。
戦車1万2000両の損失は、2021年頃の現役戦車の約9000両を超え、保管されていた分の3000両までも破壊されたことになる。
ロシア地上軍のお家芸であった大戦車軍団が、敵軍を圧し潰す戦略、包囲殲滅作戦が実行できなくなったことを示している。
軍用機についても4割の損失が出ている。軍用機とパイロットの半数近くを失い、航空作戦にも影響が出ている。
戦闘機は、ロシア地上軍の作戦への協力以外は難しくなってきており、ロシアの同盟国への航空作戦支援を実施する余裕などなくなっている。
こうした戦力低下の結果、現在ウクライナ戦争では、ルハンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州の戦線で、兵員による突撃を主体とした戦術を繰り返しているのが現状だ。
ウクライナ戦争では、ロシアとウクライナの2国の戦いばかりに注目が集まる。
だが、ロシアがウクライナに侵攻(2022年2月24日)以降、ロシアと同盟国であった国々に異変が起きていることにも注視したい。
ロシアは、軍が消耗した結果、戦力が低下し、これによりロシア周辺の同盟国や軍事協力国を支援できない状態になっている。
また、このコラムで再三指摘してきた通り、ウクライナ戦争ではロシア製防空兵器の性能にも疑問符がついている。
こうした点を考え合わせると、イランやベネズエラが米軍から直接攻撃を受けたのは、ロシアの弱体化が一因となった可能性がある。
ロシアの同盟国・支援国の政権が孤立し攻撃を受けた例を見てみよう。
①アルメニアが隣国アゼルバイジャンから攻撃を受け敗北(2023年9月)
②米国等から軍事攻撃を受け、シリアのアサド政権が崩壊(2024年12月)
③イランの核施設がイスラエルと米国から爆撃を受けた(2025年6月)
④ベネズエラ大統領が米国により拘束された(2026年1月)
⑤そして、イスラエルと米国が再びイラン(2026年2月28日)攻撃を開始し、イランの最高指導者を殺害
現在、空母2個機動打撃群を主体とする米軍がイラン周辺に集められているが、この機に乗じて、極東ロシア軍が北海道に侵攻する可能性を心配する日本の防衛関係者は今やほとんどいないだろう。