目標の限定:核とミサイルだけ抑え込む
米・イスラエルは、対イラン戦略の目標を徹底して限定している。
核開発の阻止
イスラエル本土へのミサイル・無人機攻撃の阻止
この2点に絞り込み、それ以外の領域には踏み込まない。イランの地域覇権、シリア・レバノンでの影響力、国内政治の動向などは「副次的問題」として扱われる。
目的を広げれば、戦争は泥沼化する。限定こそがこの戦略の核心である。
地上侵攻避ける理由:イラクとシリアの教訓
米国はイラク戦争、イスラエルはシリア内戦の波及を通じて、「体制崩壊は地域のさらなる不安定化を招く」という現実を経験してきた。イランに対しても、長らく同様の判断が働いていた。
●地上侵攻は莫大なコストと反米武装勢力の増殖を招く
占領統治は長期化し、反米・反イスラエル武装勢力が拡散する。
●政権崩壊は地域秩序をさらに不安定化させる
権力の空白が生まれれば、周辺国や非国家主体が介入し、混乱が拡大する。
●「弱いまま存続するイラン」が最も扱いやすい
能力を削ぎつつ体制を維持させる方が、リスクが低いとされてきた。
このため、米国とイスラエルは公式には地上侵攻や占領を前提とせず、イラン本土ではなく、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派などの代理勢力、および軍事インフラを標的とする「モグラ叩き戦略」を採用してきた。
しかし今回、最高指導者アリ・ハメネイ師が標的となり、IRGC(革命防衛隊)幹部も殺害されたと複数の報道*1があることを踏まえると、この前提を根底から揺るがす可能性がある。
*1=「The New Arab」は「共同攻撃はハメネイ師とペゼシュキアン大統領を標的とした」と報道し、「Al Jazeera」は米国のトランプ大統領が「ハメネイは殺害された」と発言したと伝えている。
この事態は、従来の「弱体化の維持」では説明しきれない。
●最高指導者の排除は、体制の中枢を直接破壊する行為
●革命防衛隊幹部の同時殺害は、指揮系統の崩壊を狙った可能性
●米・イスラエル双方の指導者(トランプ氏・ネタニヤフ氏)が「体制崩壊の機会」に言及したと報じられている*2
*2=トランプ氏は「イラン国民よ、国を取り戻せ」と呼びかけ、ネタニヤフ氏は「多くの高官が排除された」と発言したことが複数の海外メディアで報じられている。
これらは、米・イスラエルがイラン体制の転覆を現実的な選択肢として検討し始めた可能性を示唆する。
ただし、地上侵攻のコストとリスクは依然として巨大であり、「体制崩壊を誘発するが、自らは占領しない」という形の戦略(空爆+内部崩壊誘導)が採られる可能性が高い。
海空軍による短期・限定攻撃の構造
今回の攻撃も、海空軍による短期作戦として実施されている。
●空爆・サイバー・特殊作戦の組み合わせ
●数時間〜数日の短期作戦
●米国内の反戦世論を刺激しない
●ロシア・中国が介入できない「絶妙な閾値」
●米・イ両軍にとって事実上の実戦訓練
作戦は「短く、深く、限定的に」。これが米・イスラエルの一貫した作戦デザインである。