「ワン・グロサリー」構想と物流網の完全統合
同社は現在、食料品事業を「ワン・グロサリー(1つの食料品事業)」という一貫した思想の下で再構築している。
象徴的なのは、これまで独立していた食料品物流部門(AGL=Amazon Grocery Logistics)を、世界運営部門(Worldwide Operations)へと統合した動きだ。
これにより、生鮮食品を家電や日用品と同じ高度な自動化物流網で扱う体制が整った。
この物流インフラの統合は、顧客の購買行動を根本から変えつつある。
2025年以降、生鮮食品を通常の当日配送網に組み込んだことで、顧客は「バナナや牛乳」を「書籍や小型家電」と同じカートに入れ、一括して受け取ることが可能になった。
この利便性の向上により、生鮮品の当日配送を利用する顧客の購買頻度は非利用者の約2倍に達している。
既に高速配送の売れ筋上位は生鮮食品が占めており、アマゾンは消費者の「日常の生活インフラ」としての地位を固めつつある。
AIエージェント「アレクサプラス」との相乗効果
戦略のカギを握るもう一つの要素が、2026年初頭に本格始動したブラウザー版アレクサとの連携である。
先行提供されている「Alexa+(アレクサプラス)」は、従来の音声対話に加え、パソコンやモバイル機器のブラウザー上で視覚情報を活用したマルチモーダルな操作を可能にした。
利用者は、AIが家庭内の煩雑な事務作業(ライフ・アドミン)を代行する「エージェント主導のデザイン」を通じ、冷蔵庫の在庫管理やレシピに基づいた注文をシームレスに行える。
例えば、パソコンで作成した夕食の献立から、不足している食材を自動で判別し、そのまま当日配送のカートに追加するといった体験が日常化している。
AIが「家庭のハブ」として機能することで、食料品購入の心理的・物理的ハードルは一段と下がっている。