価値の単位の揺らぎがショックを生んだ
一方で、AIエージェントが本格的に業務を代替すれば、新しい市場が生まれる可能性もあります。人件費の一部がAI費用に置き換わるからです。
ただし、その移行速度は業界や規制に左右されます。特に、金融や医療など専門性が高い分野では、専門家の監督が不可欠であり、急激な置き換えは難しいでしょう。
ここで冷静に整理すべきは、株価の変動は期待値の再計算に過ぎないという点です。
市場は未来のキャッシュフローを織り込みます。その前提が揺らげば評価も揺れます。それは技術の失敗ではなく、構造変化の反映です。
では、SaaS企業は何を考えるべきでしょうか。
第1に、自社の収益がID数に依存していないかを確認することです。
第2に、AIエージェントが自社の顧客行動をどう変えるかを想像することです。
第3に、課金単位を再設計できるかどうかを検討することです。
AI時代の競争は、性能の差だけでは決まりません。価格モデルの設計が競争力になります。どの単位で請求するかが、顧客との関係を決めます。
そこに戦略の余地があります。クロード・ショックとは、AIモデルの性能ショックではありません。価値の単位が揺らいだショックです。
ID課金で描いていた成長曲線が、そのままでは通用しないかもしれないという警告になります。
結論は明確です。AIエージェントはID課金を直ちに否定するわけではありません。しかし売上予測の前提を変えます。
この理解を間違えるべきではありません。
SaaS企業の株価が下がったのは、その再評価が始まったからです。提供側であれ利用側であれ、私たちがいま考えるべきことは、AIを導入するか否かではありません。
「自社の商品やサービスの価値をどの単位で価値を測り、どの単位で請求(あるいは支払い)するのか」です。
人の数なのか、仕事の量なのか、成果なのか。その設計思想こそが、次の企業価値を決めます。
筆者作成