クラウドへの移行期にも似たような現象が

 過去にも似た転換はありました。

 オンプレミス型(自社内にサーバーやネットワーク機器、ソフトを持って運用する形態)からクラウド型へ移行したとき、売り切りモデルはサブスクリプションへ変わったのです。

 そのときも一時的に評価の揺れが起きました。しかし最終的には、継続課金という新しい安定モデルが確立しました。

 今回の違いは、AIがユーザー数そのものを減らす可能性がある点です。

 従来はIT投資が進めばID数は増えました。しかし、AIエージェントは、IDを増やさずに生産性を上げます。

 ここが、これまでの成長ストーリーと決定的に違う部分です。

 経営の視点で読み替えると、問われているのは作業の価値の測り方です。社員1人当たりいくら払うのか。それとも業務1件あたりいくら払うのか。さらに成果あたりいくら払うのか。

 AIエージェントは、価値を人から仕事へ移します。つまり、課金対象が人ではなくプロセスになるのです。

 このとき、売り上げの上限は従業員数ではなく、業務量や取引量になります。市場はいま、その上限がどこにあるのかを探っているのです。

 もう一つ見落としてはならないのは、SaaSのサービスを受けてきた企業側のIT予算は急には増えないという事実です。

 AIを導入しても、全体予算の枠内で再配分されることが多いのです。
するとSaaSに支払われてきた予算がAIに振り替えられます。

 これがSaaS企業への圧力になります。