高市政権の「はしご外し」を中国が画策?
中国が真に恐れているのは、地域の平和や国防についてこれまで主体的に考える癖を持たなかった日本人が、高市政権誕生によって、自ら考え行動するように意識が変わってくること、覚醒することだと思われる。それが、米中新冷戦の趨勢に影響し、新たな国際社会再構築の枠組みに最も影響するからだ。カナダや欧州各国と米国の分断をうまく誘導できても、日本が覚醒し米国の隣に副管理者として並ぶと、これは中国の望む世界の枠組み再構築の大きな障害となる。
だからこそ、高市つぶしに中国は必死なのだ。そのために、効果的な方法として思いつくのは、4月のトランプ訪中で、1972年のニクソン・ショックのように、米中が電撃的な関係改善をみせ、高市政権の対中強硬姿勢の「はしご」を外すやり方だ。
トランプから、台湾有事に関する中国にとって都合のよい言質、高市批判のような発言がとれれば、習近平にとっての金星だろう。だが、習近平政権にそういうアクロバット技ができる外交官が生き延びているのか。
次に考えられるのが、高市政権を軍国主義の亡霊として批判し、日本が米国の戦争の駒として利用されるという危機感をあおることだ。3月19日の高市訪米時での日米首脳会談で安全保障や経済協力でなんらかの合意があった場合、米国は日本から金を巻き上げている、米国の代わりに中国と戦争させられる、といった言説が親中派の言論人から拡散されるかもしれない。
もっとも、こうした反米意識や反戦意識を刺激する世論は、中国が尖閣諸島や台湾海峡周辺で海警船や軍艦をうろうろさせている現実の前ではあまり訴求力がなかろう。
いずれにしろ、今回の選挙結果は、日本の有権者が、中国の価値観ではなく、米国など民主主義の価値観に従って、日本が国際社会の再構築プロセスにおいて能動的に動くことを期待したものだ。中国による世論誘導や情報戦に惑わされず、自分たちの選んだ政治家、政権の仕事ぶりを冷静に観察し、ジャッジしていくことが重要だろう。
福島 香織(ふくしま・かおり):ジャーナリスト
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『なぜ中国は台湾を併合できないのか』(PHP研究所、2023)、『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房、2023)など。