米国が望む新たな通商秩序「ターンベリー体制」

——オウルズコンサルティンググループのレポート「2026年地政学・経済安全保障クリティカル・トレンド」の中で、「『ターンベリー体制』と加速する同志国連携」という言葉を挙げられていました。これはどういう意味ですか。

菅原:端的に言うと、WTO(世界貿易機関)体制の終焉と、2国間ディール中心の世界への移行です。米通商代表部(USTR)のグリア代表もはっきりと「WTO体制は終わった」という趣旨の発言をしています。

 ターンベリー体制とは、ルールに基づく多国間貿易ではなく、2国間のディールに基づく新しい通商秩序です。ちなみにターンベリーというのは、昨年に米国とEUが通商合意に至ったスコットランドの地名です。象徴的な場所の名前を取って、この新体制をそう呼んでいます。

——ターンベリー体制、日本にとっては困った話ではないですか。

菅原:正直、非常に困ります。日本は食料もエネルギーも自由貿易体制の恩恵を受けてきた国です。WTO体制を守っていかなければならない半面、トランプ大統領がいる手前、現実問題として、ターンベリー体制にも対応せざるを得ません。これは日本だけでなく、世界中の国が置かれている厳しい現実です。

——トランプ大統領は韓国に対して関税を現行の15%から25%に引き上げると表明しています。日本にとっても他人事ではありませんね。

菅原:その通りです。トランプ大統領としては「韓国は約束したはずなのに実行が遅すぎる、それならば関税をもっと引き上げる」ということです。

 韓国が最初に標的になった理由は必ずしも明確ではありませんが、日本に対しても「合意が守られていない」と判断されれば、同じことが起きる可能性はあります。現時点では、日本は対米投資5500億ドルを含め、比較的順調に合意履行を進めているため、すぐにターゲットになる可能性は高くないでしょう。