陸続きの同盟国を持つ欧州、海に囲まれた日本の“脆弱性”

 欧州の西側先進国と日本が決定的に違う点は、いざという時に“陸続き”で食料を融通し合える同盟国・同志国が隣接しているかどうかだ。

 欧米主要国の中で、イギリス・ドイツ・イタリアの3カ国は相対的に食料自給率が低い。

 だがドイツとイタリアは、同じNATO(北大西洋条約機構)加盟国で欧州屈指の農業国であるフランスや、欧米の友好国で「欧州のパンかご」の異名を誇る、小麦の大輸出国ウクライナなどから、陸路で比較的楽に調達できる。

 島国のイギリスも、海峡の向こう側のフランスとは英仏海峡トンネルで直結しており、事実上陸続きのため、海上封鎖で不足した食料の供給路が遮断されるという心配はほぼない。

 一方の日本はどうか。唯一の同盟国アメリカや、準同盟国の豪州、G7メンバーの同志国・カナダなどは、いずれも太平洋で隔てられている。万が一敵対国が日本列島の周囲を、機雷や潜水艦を駆使して海上封鎖すれば、海上輸送による輸入は激減する。

 輸入途絶が長期化すれば、食料供給が急速にひっ迫し得る。この地政学的な特異性が、同じ島国のイギリスとは大きく違うという点を、高市政権はもっと真剣に考えるべきだろう。

 高市氏も『国力研究』で「輸入が途絶する有事においては、日本国内で消費する食料の生産を最優先するべきことは当然です」と強調している。

 だが、JA全農(全国農業組合連合会)や小規模農家を岩盤支持層とする自民党としては、「コメの大増産→米価の下落→農家の大規模化→小規模農家の淘汰→大票田の消滅」という連鎖を危惧しているのか、「コメ大増産」とダイレクトに公言することを、どうやら意図的に避けているようにも映る。

 そこで、同書では日本のコメを米粉にし、グルテンフリーよりもより厳格な「ノングルテン」の品質を保証し、さらにパスタやピザ生地に加工して輸出すれば世界市場が広がる──との三段論法的手法で、「コメの大増産」につなげようとしているようだ。

 事実、高市氏の公式サイトでも、第1番目に「食料安全保障の確立」を提起し、「全ての田畑をフル活用できる環境創りとともに、輸出促進や先端技術の活用などにより、農林水産業、食品産業の成長産業化を急ぎ、需要と供給の両方を強化します」と表明している。何ともまどろっこしい言い回しで歯がゆい。