勝敗を決めるのは兵器ではない──兵站軽視が招いた破局の記憶

 だが、軍事の世界では、「愚将は兵隊を語り、賢将は兵站を語る」という有名な格言がある。戦争の勝ち負けは、兵隊・兵器など見た目の軍備や戦法ではなく、補給・補充や輸送、修理など後方支援の優劣でほぼ決まるという意味である。

世界中に展開する米軍は兵站も世界最強。民間コンテナ船を借り上げて在外米軍に物資を一気に輸送する(写真:米空軍ウェブサイトより)

 第2次大戦で日本軍は兵站を軽視し、ニューギニアやガダルカナル島(ソロモン諸島)、インパール(インド)などでは兵糧が欠乏し、数万人の将兵が失われた。

 人間の生存に不可欠な食料、特に日本人の主食であるコメの生産・備蓄を重視する「食料安全保障(特に主食穀物の生産・備蓄)」を、前出の5項目と同列に掲げない点が残念である。「歴史を省みない、付け焼き刃な“安全保障オンチ”」と指弾される可能性もある。

 高市氏は『国力研究』の中で兵糧に関して全く言及していないわけではなく、食料自給率アップの大切さにも触れてはいる。

 だが、「資源と経済」の大見出しの中で「エネルギー資源」を掲げて核融合を熱く語り、「鉱物資源」で南鳥島沖でのレアアース開発を強調し、その後にやっと「食料資源」の小見出しが登場するという扱いだ。

 高市氏の頭の中では、自衛隊員はもちろん国民の胃袋よりも、核融合やレアアースの方が重要なのだろうか。

 しかも「食料資源」の項でコメ増産の必要性を説くものの、「国内の主食用コメを増産し、余剰分は備蓄と輸出に回す」と“直球”ではなく、なぜかグルテンフリーの米粉の輸出増産と、あえて“変化球”を投げて様子をうかがっている。

航空自衛隊 恩納分屯基地での野外炊飯。大釜で一気に煮込む(写真:航空自衛隊ウェブサイトより)