数字が物語る食料安全保障、自給率38%という「アキレス腱」
食料、中でも主食の穀物の自給率アップや備蓄は、安全保障の最重要項目である。
2022年の西側主要国の食料自給率(農水省調べ。カロリーベース)を見ると、豪州の247%を筆頭に、カナダ177%、フランス118%、アメリカ101%と続き、いずれも小麦やトウモロコシの輸出国だ。
日本と同様、先の大戦で惨敗したドイツは79%、イタリアは52%、日本と同じ島国のイギリスも59%で、「少なくとも自分たちの食いぶちの半分は自前で賄おう」という、安全保障に対する本気度が伝わる。
また日本を敵視するロシアと中国だが、周知の通りロシアは小麦、トウモロコシの一大輸出国だ。中国もコメ、小麦、トウモロコシはほぼ自給自足が可能な態勢で、加えてこれら穀物に関しては、14億人の国民が1年間消費する量の大半をカバーするだけの備蓄量(在庫)を確保する。
各種推計によると、中国の穀物在庫は世界的に見ても極めて大きい水準にある。直近のUSDA(米国農務省)推計(2025/26年度の期末在庫)では、コメ(精米換算)約1.05億トン、小麦約1.25億トン、トウモロコシ約1.80億トンとされ、圧倒的だ。
これに対し日本の食料自給率は、2024年時点で38%と、何ともお寒い状況だ。農林水産省の資料によれば、コメは確かにほぼ100%の自給率を誇るが、パンや麺類に使う小麦は20%未満で、トウモロコシや大豆も同様に自給率が低いため、カロリーベースの総合評価で自給率を大きく落としてしまう。
日本の食料自給率の推移(グラフ:共同通信社)
食料自給率の極端な低さは、日本の安全保障上のアキレス腱と指摘されて数十年が経過するが、改善の兆しは一向に見えない。
それでも、第2次大戦時の極端な食糧不足の教訓から、日本では食糧管理制度(食管制度)のもとで、政府がコメ・麦を生産から販売まで一元管理し、いざという時の蓄えとして在庫も多く抱えた時期があった。だが、経費が莫大で赤字が膨らむなど制度疲労を起こしたため、1995年に事実上廃止されている。
主食のコメを潤沢に備蓄するという事実は、仮想敵国への強力な「抑止力」「武器」になり、安全保障上のアドバンテージになるという発想が、残念ながら日本には呆れるほど希薄だ。
農水省が発表した「主食米等の令和7/8年(2025/26年)の需給見通し」(玄米ベース)によれば、供給量は2025年6月末の民間在庫155万トンと、2025年産主食用コメ等生産量748万トン、2025/26年の政府備蓄米供給量23万トンの計926万トン。
対する2025/26年の主食用コメ等需要(消費)量は697万~711万トンと見られ、差し引くと、215万~229万トンの余剰で、これが民間在庫と政府備蓄米となる。
安全保障の観点から考えれば、大量の余剰米は、有事や大規模災害を考慮した備蓄米として歓迎すべきだろう。だが、歴代の自民党政権や霞が関の官僚は、コメの供給過剰が米価の下落を引き起こし、稲作農家の収益減に直撃すると考え、あまり歓迎しない傾向が強い。