基準改定でインフレ率が修正される理由

 そもそも的な話をすると、CPIという統計は、①消費者が購入する代表的な品目(現在は600品目弱)の価格を、②消費者が1年間に各品目を購入する金額に基づくウエイトで加重平均することで作成される。①消費者が購入する代表的な品目も、②消費者が1年間に各品目を購入する金額も、毎年少しずつ変化していく。それゆえ時々見直しをかける必要があり、その見直し作業こそが「基準改定」である。

 基準改定自体は純粋に統計精度を保つための技術的な作業であるが、過去の基準改定時を振り返ると、CPIインフレ率が大きめに下方修正されることが少なくなかった(図表)。特に、2006年改定に伴う大幅下方修正の際は、現在と同じく利上げ局面であったため、利上げの根拠となる日銀の物価基調判断の妥当性が厳しく問われる事態となった。

■図表:過去のCPI基準改定時のインフレ率の修正状況

(出所:総務省、筆者作成)

 基準改定でインフレ率が修正される要因としては、①ウエイト効果、②リセット効果、③品目改廃効果、④モデル式効果、の4点が挙げられる。

「①ウエイト効果」とは、消費者の購買行動の変化に伴い品目別ウエイトが変化することがもたらす効果である。「携帯電話通信料」を例にして考えてみよう。携帯電話通信料がCPIに占めるウエイトは、同品目がCPIに採用された2000年基準時点では0.74%であったのに対し、2020年基準では2.71%に拡大している。

 つまり、2000年時点では携帯電話はまだ「一部の人が持っているもの」に過ぎなかったが、現代では圧倒的大多数の人が携帯電話を所持し利用しているため、携帯電話通信料への支出ウエイトがこの20年間で大きく上昇したということである(その裏側で、固定電話通信料への支出ウエイトは大きく低下している)。

 その結果として、ウエイトの増加分だけ(=20年前と比べれば4倍弱)携帯電話通信料の変動がCPI全体に影響しやすくなっている(その裏側で、固定電話通信料の変動はCPIに影響しづらくなっている)。こうした支出構成の変化に伴う効果が「①ウエイト効果」である。