日銀の植田総裁(写真:ロイター/アフロ)
目次

(河田 皓史:みずほリサーチ&テクノロジーズ チーフグローバルエコノミスト)

 市場金利が上昇している。衆院選で自民党が圧勝し、先行きの市場金利に対する注目度が一段と高まっている。金利上昇の背景には様々な要因があると考えられるが、円安・インフレが継続する中で日銀の利上げ終着点(いわゆるターミナルレート)に対する目線が切り上がってきていることが1つの要因になっていることは間違いないだろう。

国債利回り上昇の背景

 年限別の国債利回りを図示した「イールドカーブ」をみると、このところ注目が集まっている長期ゾーン(10年前後)のみならず、金融政策の影響を比較的受けやすい短中期ゾーン(2年前後)も大きく上昇しており、ターミナルレートの目線切り上がりが窺われる。

「為替市場(円安)に背を押される」というのは日銀としては若干不本意かもしれないが、金融政策の完全正常化に向けた道筋が明確化してきた印象である。政策金利水準をある程度高めに保つことは、いつか必ず訪れる景気後退の際に金融緩和という政策手段を活用する余地が大きくなるということであり、マクロ経済政策オプションを増やすという点では好ましいことである。

 だが、完全正常化に向けた「ラストワンマイル」は必ずしも平坦ではない。衆院選を経て基盤が強化された政権とのコミュニケーションには引き続き慎重を期す必要があるし、AIブーム失速等の理由で海外経済が急減速して日本経済に悪影響が及べば、逆に利下げを迫られる可能性もなくはない。

 利上げ継続に向けた「伏兵」として、本年夏に予定されるCPI基準改定も挙げられる。日銀のインフレ目標の対象変数となっているCPI(消費者物価指数)は、5年に1度、「基準改定」という作業が行われる。