白黒の粗い画質で高まる異様な臨場感

 竜馬(原田芳雄)の引越し先は近江屋の土蔵である。前年に伏見の寺田屋で捕吏を射ち殺してお尋ね者になって以来、竜馬は潜伏場所を転々としているのだ。しかし、引越し早々、向かいの家の2階に囲われ者の女・幡(中川梨絵)の姿を発見すると、竜馬はもうじっとしていられない。土蔵を脱け出し、持ち前の行動力で早速幡といい仲になってしまう。

 そんなこととは知らぬ陸援隊の中岡慎太郎(石橋蓮司)は、竜馬を斬るべく土蔵を訪ね空振りに終わる。中岡は竜馬とは同郷の最も親しい盟友であったが、武力による倒幕を目指す彼ら過激派にとって、平和裡に新体制を樹立しようとする竜馬は、今や排除すべき障害になりつつあったのだ。そして同様の理由で、竜馬はまた薩摩藩からも狙われていた。

 同藩では、邸の庭先に犬のように居ついた若い人斬りの右太(松田優作)に意を含めて送り出すが、その右太のたったひとりの姉こそは幡なのであった。右太は姉のもとに身を置いて暗殺の機会を窺うが、竜馬は暢気に見えて抜け目がなく、右太は手もなく正体を見抜かれてしまう。

 一方、中岡は竜馬を斬ると公言しながら実行しないことを責められ、裏切り者として陸援隊の同志たちに監禁されていた。そんな所へ、暇を持て余した竜馬が紅おしろいで女装して、ええじゃないかの騒ぎに紛れて中岡に会いに来る。中岡の危機を知った竜馬は、有無を言わさず右太にも加勢させて、詰め腹を切らされる寸前の中岡を救け出す。

 こうして、命を狙う者と狙われる者は一体となって同じ運命を辿ることになるのだが、黒木監督は、墨を刷いたような白黒の粗い画質によって異様な臨場感を高めつつ、随所にユーモアを散りばめて最後まで観客を飽きさせない。