空中機動作戦開始前の事前破壊

(1)空中機動作戦の弱点を除去する作戦開始前の爆撃

 空中機動作戦の最大の弱点は、空中機動時と降着時の約1~2時間だ。

 この間は戦力が発揮できない時間、つまり戦えないのである。空中機動時に防空兵器で攻撃されれば、攻撃部隊も輸送機なども空中で破壊されてしまう。

 降着時に使える兵器は兵士が携行している小銃・機関銃・手榴弾・携行可能な迫撃砲だけだ。時間の経過とともに、部隊の増強、軽戦車など重装備の追送、戦う弾薬の補給をしなければならない。

 もしも、戦力が増強される前に戦車などから攻撃され、火砲の砲弾が撃ち込まれれば、対抗できる手段が全くなく破壊されてしまう。 

 そのため、空中機動の経路上、および降着直後に攻撃してくる部隊や兵器を、航空攻撃やミサイル攻撃で事前に破壊しておかなければならない。

 事前に破壊するには、防空兵器、戦車や火砲などの位置、あるいは降着部隊を撃破する機動打撃部隊の位置の情報を入手しておく必要がある。

 その上で航空攻撃やミサイル攻撃で、組織的な戦闘ができないように破壊するのである。

図2 降着したヘリボーン部隊への反撃(イメージ)


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(2)効果的な事前破壊ができていなかったロシア軍

 ロシアは、ヘリボーンの第1波が空港に降着し、ウクライナの空港警備部隊と戦い、それらを退けて、その日のうちに占拠することができた。

 このことで、空港を直接警備していたウクライナの少数の部隊や防空兵器は、戦闘機による空爆、ミサイル攻撃、攻撃ヘリコプターからの攻撃により相当の被害を受けた。

 作戦開始前の爆撃等の効果が、ある程度あったと考えられる。

 しかし、ロシアの大規模空中機動部隊やキーウに北部から迫る地上部隊への対処のために、キーウ周辺に配置されていたウクライナ軍の予備機動打撃部隊と火砲は、爆撃を受けずに残存していた。

 ロシアは、作戦を妨害する可能性があるものをすべて破壊していなかったわけだ。また、状況の変化によって妨害する部隊が出現してくれば、それを直ちに叩き潰す準備もできていなかったようだ。

 もしも、これらウクライナ軍の予備部隊や防空兵器までも空爆できていたら、ロシアの後続部隊の第2波、第3波が投入され、空中機動作戦は成功していただろう。

(3)ベネズエラ防空兵器等を事前破壊していた米軍

 米軍は、電子戦や各種偵察衛星などを使ってあらゆる情報収集を行っていた。そして、開発中の情報共有システム(米空軍を中心としたABMS Advanced Battle Management System:先進戦闘管理システム)から、ステルス戦闘機や爆撃機に対して攻撃目標を提供していた。

 この情報は、常に最新のものに入れ替えられる。

 米国は得られた情報によって、ロシアとは違い、作戦を妨害する可能性があるものすべてを破壊していた。また、状況の変化によって妨害する部隊が出現してくれば、それを直ちに叩き潰す準備もできていた。

 米軍のヘリボーン作戦が全く妨害されなかったのは、反撃の可能性がある防空兵器や反撃部隊を事前に破壊していたからと考えられる。