今後の展望と残された課題

 米マッキンゼー・アンド・カンパニーは、エージェント型コマース市場について、2030年までに3兆〜5兆ドル(約470兆〜790兆円)規模に達すると予測する。しかし、その普及には乗り越えるべき壁があるようだ。

 第1の課題は「信頼」である。

 AIエージェントが自律的に購入を代行する際、価格の妥当性やプライバシーの保護をどう保証するのか。認証技術の標準化や、不正防止のための「Know Your Agent(KYA)」といった仕組みの整備が急務となる。

 第2に、小売業者の収益構造の変化だ。

 エージェント経由の取引が増えれば、自社サイトへの流入が減り、関連商品の「ついで買い(クロスセル)」や上位モデルへの誘導(アップセル)といった追加販売の機会が失われる可能性がある。

 これを前述したDirect Offersのような新たなパーソナライズ提案で補えるかどうかが、小売業者の命運を分ける。

「欲しい」と思ったら、すぐさま商品が手元に届く「ゼロ・クリック・コマース」への道筋が見え始めた。

 だが、AIという「代理人」が消費者の財布を握る未来において、最後に選ばれるのは技術的な洗練さか、それともブランドへの信頼か。

 小売りとテックの境界線が消えゆく中、2026年はその答えを見いだすための実験・元年といえるのかもしれない。

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