「AIは人間の脳と全く異なる形では発展しない」

──人間の脳と神経がどのようにつながり、刺激や指令がどのように肉体の各所と伝達し合っているのか。その結果として肉体はどのような行動に出るのか──という点について解説されています。AIの開発は人間の脳を再現するように発展していくのか、それとも人間の脳とは全く方向性の異なる形で発展していくのか、どちらでしょうか。

ベネット:自信を持って言えますが、人間の脳と全く異なる形でAIは発展しません。今日使われているAIがすでに脳を参考にして開発されているからです。

 情報の重みづけを通して学習をさせて、望ましい出力を計算する方法は機械学習の基礎になっています。何兆もの接続からなる入力の合計を計算するのです。知能を具体化する方法は脳からヒントを得ています。

 そこで、私たちは脳からどれだけ学んで、どの程度その構造を参考にする必要があるのかということが問題になりますが、AI開発のコミュニティはこの点で意見が分かれています。

 多くのAI研究者は神経科学からすでに必要なものはすべて学び取っていて、残されているのは応用的なレベルでしかないと考えています。でも、私はそうは考えていない派で、脳から学ぶことはまだ膨大にあると感じています。

 一方で、脳から学ぶと行き過ぎる面もあります。人間の人体や脳はタンパク質を基礎に進化した複雑な構造を持っているので、参考にならない部分もあるのです。

 脳のどのような側面がAI開発において有用で、真似るべきなのかを見極めていくことは、とても興味深い知的な挑戦です。すでに必要なものはすべて解明済みなのか。まだ参考にすべきところに気づいていないのか。こうしたことが疑問として提起されています。

 私は予見しているのですが、そのうち神経科学からある程度影響を受けたAI開発をめぐる巨大なブレイクスルーが到来するでしょう。なぜそう考えるかというと、壁にぶつかると神経科学がカギになるからです。

 私たちが望むように家事ができるロボットはまだありませんが、非常にエネルギー効率の良い方法で、それを実現できるはずだと私たちは知っています。なぜなら、人間がそれをやっているからです。我々は行き詰まると解決の糸口を探し、再び脳に着目する。神経科学は人間にとって素晴らしい存在証明なのです。

──超知能AIシステムを開発するためには、「心の理論」が必要であると書かれています。