病院が「不親切」になってしまう理由

 繰り返すが、夜間の病院は医師と看護師だけでは回らない。

 救急搬送の受け入れ調整や問い合わせの電話、受け付け、患者情報の登録、検査や病棟との連絡、会計、物品の手配……。

 こうした医療現場を支える仕事が連続して流れて初めて、診療が成立するのだ。

 ここが詰まってしまうと、看護師が電話対応や受け付け業務に時間を割かれ、医師が事務作業を担うことになる。しかし、医師の働き方改革も進む中で、無限に穴埋めするということもできなくなっている。

 結果として、医療現場は現実的な判断として、救急対応や初診患者への対応、夜間の外来などを絞ることになる。

 患者であるみなさんが病院で「待つ」「断られる」ようになる背景には、こういったオペレーションの人手不足が存在しているのだ。

インフレの循環から外れた医療はどうなる?

 この問題をさらに難しくしているのは、医療がインフレを価格に転嫁しづらい構造にある、という点だ。

 一般的なサービス業なら、人件費の上昇を価格の改定やサービス設計の変更で吸収する余地があるだろう。

医療の世界では、人件費の上昇を柔軟に吸収できる余地が小さい(写真:graphica/イメージマート)

 ところが、医療サービスの多くは公的価格(診療報酬)に依存し、現場が自由に値づけすることで、人件費の上昇を吸収できるかというと、その余地は極めて限られている。物価や賃金は毎年、場合によっては数カ月単位で動く半面、診療報酬改定は基本的に、2年に1回しか行われない。

 この時間差が大きいがゆえに、医療現場で起きることはシンプルだ。

 ①医療機関の利益が削られる、②医療サービスの提供量が削られる、③投資が先送りにされる、といういずれかの手を打たなくてはならなくなる。

 そして投資を先送りにしてしまうと、業務が効率化できず、より多くの人が必要になり、採用ができなくなると、現場が回らなくなる、という負の循環が強くなっていく。

 それも、社会保障関係費の増加が財政や保険料負担として問題視されるなかで、診療報酬を大きく上げて、一気にこの問題を解決するという道は、取りにくくもある。

 こうした悪循環の帰結として、医療機関の倒産件数も増加傾向にある。帝国データバンクによれば、2025年上半期(1〜6月)の医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産は35件とされ、前年(2024年)を上回るペースで推移している。

 ここから先は、どうなるのか。