日本人以上に日本的

 安青錦の評価を特別なものにしているのは、土俵上の強さだけではない。むしろ相撲界の内部で語られるのは、その立ち居振る舞いや所作、そして礼節の徹底ぶりだ。

 来日当初から安青錦は「日本の相撲とは何か」を学ぶ姿勢を崩さなかった。勝って驕らず、負けて言い訳をしない。その姿勢は、ベテラン親方衆からも一目置かれている。

 稽古場では誰よりも早く土俵に入り、誰よりも遅くまで残る。勝負の世界に身を置きながら、日々の積み重ねを何より重んじる。その姿は、しばしば「外国出身力士」という枠組みを忘れさせる。

今年1月4日、荒汐部屋に出稽古し、若隆景(右)と相撲を取る安青錦(写真:共同通信社)

 多くの相撲関係者たちが安青錦を評する際に「日本人以上に日本的だ」と口をそろえている。言葉の選び方、頭の下げ方、勝敗後の一礼――。すべてが自然であり、作為がない。

 この日もVを決めた直後、表彰式において土俵下で行われた優勝インタビューの冒頭、館内の四方を向いて一礼。「皆さんのおかげで優勝できてよかったです」と口にすると、客席から万雷の拍手を浴びた。おそらく、これほどまでに礼節を重んじる外国出身力士は、過去いなかっただろう。

 相撲には、勝敗以上に重んじられる暗黙の美学がある。力任せではなく、型を尊び、礼を失わないこと。安青錦は、その文化を「理解しよう」とする段階をすでに通り過ぎている。身体に染み込ませ、自分のものとして表現しているのだ。