洋上風力発電の可能性

 もちろん、堤防を極端に高くするという発想もある。

 しかし50メートル級の防潮堤を延々と築くことはコスト面で非現実的であり、同時に、日本の美しい景観という最大の外貨獲得資源である観光、そして文化そのものを根本から損なう危険を伴う。

 結論として、原子力は日本にとって、一定の補完的役割を果たし得ても、化石燃料を本格的に代替する「主力」にはなり得ない。

 そうなると、残る道は再生可能エネルギーである。

 再生可能エネルギーには、景観との調和、立地制約、不安定電源という課題がある。送電網への負荷という問題もある。

 しかし、送電網の強化や蓄電池整備は、国家予算を投入し、戦略的に進めれば解決可能な領域である。問題は「日本がどこで量を確保するか」である。

 その答えは明確であろう。

 日本は排他的経済水域(EEZ)が世界第5位の海洋国家であり、周囲を海に囲まれている。この海域を活用した洋上風力発電こそ、日本が量的に最も拡大できる現実解となる。

 とりわけ日本の場合、海岸から少し沖に出ると水深が急激に深くなる。したがって海底への着床式だけでは限界がある。

 昨年、洋上風力発電の3つの巨大プロジェクトの事業者として国に選定された三菱商事が全プロジェクトから撤退し、一気に「機運」や「空気」が萎んでしまった。しかし、三菱商事が撤退したのは海岸に近い着床式であった。

 カギとなるのは浮体式洋上風力、すなわち船のように浮かぶ浮体を固定する構造を用いた洋上風力発電である。ここに日本が技術立国として飛躍できる余地がある。

 さらに、洋上風力は単なる発電設備では終わらない。そこに各種センサーや通信機能を備えれば、安全保障上の情報拠点としても活用できる。

 加えて漁礁機能などを組み合わせれば、漁業振興の基盤にもなり得る。エネルギー・産業・安全保障を同時に支える多目的インフラとして、実証を進めればよいのである。

 技術立国、資金大国、資源エネルギー小国の日本は、「造船日本」「プロジェクト国家日本」の総力を結集して「浮体式洋上風力発電」の実現のために「補助金」「財政投融資」「政府ファンド」「FIT(固定価格買取)制度」などを総動員して浮体式洋上風力発電を実現すれば、利用可能な海域は広大な排他的経済水域に広がる。

 まさに、高坂正堯の唱えた「海洋国家日本」を世界に向けて高く掲げることができる。

 では、そのための財源をどう確保するか。