先手を打つか事後対応か、制限するか取り込むか
「AIに大学入試問題を解かせてみたらどうなるか」という問いは、もちろん今回が初めてではなく、冒頭の「東ロボくん」のような試みが10年以上前から行われてきた。そして生成AIが登場すると、満点とは言わずとも、かなりの好成績を取れることが確認されるようになってきている。
それに対して、今度は「では大学入試・大学教育の側はそれにどう対応するのか」という問いが投げかけられるようになってきている。
各教育機関の対応は千差万別だが、ここでは2つの軸を使って整理してみたい。
まずは「先手を打つか、それとも事後対応するか」という軸である。前者は「将来を見据えて、大学教育自体を再設計する」という発想、後者は「問題発生への対処・防止に取り組む」という発想だ。もうひとつは「AI使用を制限するか、それともAIを取り込んで統合するか」という軸で、それぞれ文字通りの意味となる。
この軸に従って各種の取り組みをマッピングしてみると、以下のようなイメージになる。

それぞれの象限を順に見ていこう。
(A)使わせない
まずはシンプルに「使わせない」という対応だ。AI技術がいかに進化しようと、それを使わせなければ問題は起きない。後ろ向きだが、有効な対策ではある。
「1. 技術的・物理的禁止策」は、文字通りAIを利用できない環境をつくり出して、そこで学生たちにテストや学習を行わせるというものだ。
そもそも大学共通テストのような入学試験は、物理的に隔離された空間で行うのが一般的であり、最初から携帯電話等の情報端末の持ち込み・使用が禁止になっている場合が大半であるため、「使わせない」対応が取りやすい。
最近ではオンライン試験・授業などのように、学生がリモート環境にいることを許可するケースも増えているが、その場合でも「ラップトップのカメラを常にオンにして受験者・受講者の顔が写るように強制する」といった対策を講じることができる。
技術的・物理的な隔離は、少なくともここ数年は主要な対策として維持される可能性が高く、実際に欧米の大学では、デジタル機器を持ち込ませず手書きで回答させる古典的な試験形式が復活傾向にあるとの報道もある。