AIは「文字通り」にしか出力できない

 初めに分かりやすい例からご紹介します。多くの方がご存じの

古池や 蛙飛び込む 水の音:芭蕉

 少し前なら「誰でもご存じの」と書いたのですが、今学期500人ほどの小中学生を実際に教えてみると、上の学年でも必ずしもこうした句の読みは定かでないことを認識しました。

 これをシンプルに入力して静止画を出させてみると、

 単なるマンガですね。かつ、蛙がジャンプしている姿と、水の反跳が並列して描かれているために、論理的には破綻しています。

 あえて言えば「蛙飛び出た 水の音」みたいなものですが、水中からカエルが飛び出しても、あのような飛沫にはなりません。ナンセンスです。

 要するに「古い池」「蛙」「飛び込む」「水の音」と、与えられた文字をそのまま羅列するだけという、分かりやすい出力が得られます。

 この事情は動画でも全く同じで、Soraに「古池や・・・」を入力してみると、「古い池に蛙が飛び込んで、水の音がする」。そのまんまです。

 ご存じの方はご存じのように、多くの生成AIは英語で動きますから、「古池や・・・」の句は、まず次のように英訳されます。

An old pond, a frog jumps in, the sound of water

 次に「old pond」「a frog」「jumps in」「sound of water」といった要素が、「芭蕉」という注記によって、これが日本の俳句であるという前提は分かっているので、それに合致するように羅列され、出力される。

 ある意味バカ正直ですから、使い方をきちんと原理から考えればそれなりに便利な道具にもなります(別の「算数」STREAMMの例で、追ってご紹介できたらと思っています)。

 もう一つ例を入力して、確かめてみましょう。

閑さや 岩に染み入る 蝉の声:芭蕉

 静止画なら、

 単なるマンガで、俳句の持つ「幽玄」も「深淵」も無関係。あっけらかんとしたものです。動画でも同様で、ただ単に蝉が岩に停まって鳴いている。それだけです。

 実際にはセミは樹木の幹にとまり、岩に張り付いているケースは、脱皮して羽化するような場合は別として、一般的ではないようですが・・・。

 現状の大規模言語システムによる生成AIには「比喩」という概念がありません。

 例えば、「雪のように白い肌」のような分かりやすい「直喩」(あるいは明喩)を打ち込んでみると、

 これではただの幽霊です。美白の素肌美人を描く趣旨にはならない。ましていわんや、2026年段階の大規模言語システムにとって「隠喩」は完全に守備範囲外になります。

「彼は怒るとライオンだ」(彼は怒ると、まるでライオンのように怒り狂って手が付けられない・・・といった意味をまるでライオンではなくライオンと言い切ってしまう修辞法)を入力してみると 

 ライオンの前足と人間のこぶし、併せて4本の手が仏像のように並んでいます。

 同じコンテで人間のマンガ家が描いても、こういう表現は採らないだろうし、そもそもこれでは読者に意味が通じません。

 ちなみに「彼は怒ると、まるでライオンのようだ」と入力しても同様の出力で、要するに「直喩」も「暗喩」も関係ない。

 動物のようにまっしぐらな対象理解しかできない、かなり散文的な代物であることをよく理解しておくとよいと子供たちには教えます。

 幸い、小学1年生でもこうした比喩はよく理解してくれ、AIが明確に限界を持つ機械、道具であることを体得してくれます。

 しかし、この理解が必要な大人が、現実には国際社会に億のオーダーで存在するように思われ、かなり心配な状況です。