奇襲を達成する米軍の秘匿作戦

 米軍においては、作戦が実際に開始され、1発のミサイルを発射するまでは、どの部隊が何をするか予測することがほとんど不可能である。

 なぜなら、米海軍や米空軍の動きが平時の状態から不明なことが多いからだ。作戦後の動きも、ミサイル攻撃により目標が爆発したことは判明しても、その時のミサイルや軍用機の動きは映像などでは公表されない。

 例えば、米海軍の空母は横須賀港に入る時、埠頭に係留されている様子は映像で公表される。

 だが、その空母がいったん港を出航すると、日本海に入ったことや西太平洋からインド洋に向かったことなどは公表されるが、どの位置にいるとか、どのように動いたかという情報は一切公表されない。

 今回のベネズエラ攻撃でもこの隠密行動が作戦を成功に導いた。

 米空母の動きは、敵のエリント偵察衛星が空母上空を通過する際に、空母が電波を放出しなければ、その位置はまず解明できない。また、画像偵察衛星で洋上を移動する空母を見つけることも不可能に近い。

B-1爆撃機を投入した囮作戦

 米空軍は、戦闘機では「F-35」や「F-22」などのステルス戦闘機を投入したが、「B-2」爆撃機ほどのステルス性能がない「B-1」爆撃機もベネズエラ攻撃に使用した。

 このB-1爆撃機は、主に長射程巡航ミサイルでベネズエラ防空兵器の射程外からのスタンドオフ攻撃に使用されたと見られている。

 防空兵器に向けてミサイル攻撃する場合、防空兵器はその位置を知られないよう展開位置を変える場合があるため、攻撃側は展開した最新の情報を手に入れなければならない。

 一方、ベネズエラからすれば、防空ミサイルの射程外であっても監視レーダー内にこの爆撃機が入れば、防空部隊は「攻撃されるかもしれない」と緊張感が走る。

 そして各種レーダーを作動する可能性が高い。

 しかし、実はこれは米軍の思う壺でもある。ベネズエラ軍の防空兵器がレーダーを作動させれば、米空軍の情報収集機や早期警戒管制機がベネズエラ防空部隊の最新の情報(種類と位置)を、瞬時に知ることができるからだ。

図5 囮として機能させたB-1爆撃機


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 ステルス性能が比較的低いB-1爆撃機は、むしろそのことによって囮としての役割を果たし、作戦全体の精密度を上げることができたのだ。