米軍による電子情報収集の仕組み

 電子戦は、電波を放出する兵器の電子情報を収集することから始まる。

 米国は、電子情報収集機「RC-135」やエリント衛星を使って、電波を放出する兵器(レーダー)の電子情報を収集し、それらの特色を解析している。

 基地内の解析チームがその固有の特色を多くの時間をかけて解明し、どんな兵器がいつどこにあるのかを可視化する。

図2 米軍による電子情報収集(イメージ)


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 このような電子情報収集が防空兵器を破壊する攻撃の基礎となっているのである。

 解析チームの解明の結果を取り入れて、戦場近くの上空に展開する早期警戒管制機(AWACS)や空中指揮機が、リアルタイムで敵の防空兵器の種類や位置を特定することができる。

 詳細な位置情報とそのレーダーの特色を戦闘機に伝え、戦闘機が対レーダーミサイルを発射して破壊する。

 この際に、もし敵が放出している電子戦情報が解明できていなければ、正確な攻撃は難しくなる。

図3 早期警戒管制機等が電子兵器の種類と位置を特定(イメージ)


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ロシアにはできない米軍の破壊指示

 たった1日で、ロシアは無人機やミサイルで約700の目標に対して、ウクライナも無人機で100を超える無人機攻撃を行うことがある。

 これらは、慣性誘導で事前に固定目標を狙ったものがほとんどだ。リアルタイムで攻撃目標を指示しているものではない。

 かつて、ウクライナがロシアの爆撃機基地に駐機してある40機以上の爆撃機や早期警戒管制機を、FPVドローンを使って映像を見ながらリアルタイムに攻撃したことがあった。

 これは稀な作戦であり、通常あることではない。最近、クリミアのレーダーサイトや防空兵器を映像で確認しつつ攻撃したことがあるが、1度に10個程度の目標を攻撃しているだけである。

 一方、米軍の場合は、攻撃したい数百あるいはそれ以上の目標を戦闘機やミサイル部隊により短時間で一度に攻撃することが可能である。

 戦闘機・攻撃機のディスプレイには、敵の防空兵器などの徹底分析された情報に加え、早期警戒管制機(AWACS)が収集する敵戦闘機などの情報や無人機や偵察衛星が収集する地上目標情報などの情報が、情報共有システムを通して表示される。

 なお、この情報共有システムに関して、米軍は空軍が中心となってABMS(Advanced Battle Management System:先進戦闘管理システム)を開発しており、陸海空の統合的な指揮統制の実現を目指している。

 いつどの目標をどのような順番で攻撃するかが指令されれば、各戦闘機や爆撃機が一斉に攻撃に移り、数百の目標を短時間に制圧するのである。

 米軍によるベネズエラ攻撃では、米軍の作戦を妨害するベネズエラの陸海空軍が装備するすべての防空兵器、火砲、戦車部隊などの攻撃目標を、空中指揮管制機が優先順位を定め、短時間に精密な攻撃を実施させたと考えられている。

図4 空中指揮機等による攻撃目標指示(イメージ)


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 旧ソ連軍の各軍管区部隊(方面軍)には、空中指揮機が配備されていて、方面軍演習では各種空軍機や地上軍部隊の指揮を実施していた。

 だが、ウクライナ戦争では空中指揮機からのコントロールがなく、情報収集機(早期警戒管制機兼用)による電子情報の収集が行われている動きも見えない。

 ロシアは現在、空中から多目標への攻撃指示ができていないようなのだ。これが大きな相違点であり、米軍の凄さと言えよう。