国債価格は暴落し、新たな追加担保を生む「死のスパイラル」
英企業年金基金の多くは長期金利の変動をヘッジする債務主導型投資(LDI)戦略を採用していた。金利上昇でスワップやレポ取引のポジションが急速に悪化。マージンコール(追加担保)に対応するため英国債を売却せざるを得なくなり、純売却額は360億ポンドに達した。
国債価格は暴落し、新たなマージンコールを生む「死のスパイラル」に陥った。年金基金のデフォルト(債務不履行)を避け、市場機能を回復させるため、イングランド銀行は引き締めを一時休止して無制限の国債買い入れを表明。これで市場は沈静化に向かった。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のイーサン・イルゼツキ准教授(財政政策)は危機の本質は「政治が制度を軽視し、結果として中銀が金融システム維持のため本来の政策を曲げざるを得なくなったことにある」と指摘する。
トラス政権はエコノミストの専門知を軽視し、財務省トップを解任。予算責任局(OBR)の独立評価も拒否した。「成長」を隠れ蓑に政治イデオロギーを優先させる姿勢を浮き彫りにしたことが長年にわたる「財政の透明性」という制度的信頼を一瞬にして破壊した。