「英国の政策決定プロセスが新興国並みに不安定化した」

 市場は「不都合な数字を隠している」「英国の政策決定プロセスが新興国並みに不安定化した」とパニックを起こした。中銀がインフレ抑制という本来の目的を達成できなくなり、金融システムの崩壊を防ぐために意図に反して金融緩和を強いられる状態に陥った。

 イルゼツキ氏は「金融安定のために市場介入をするにしても、それが財政赤字の穴埋めや特定の金融セクターの救済になってしまうと、通貨の安定を守るという中銀の独立性が根本から揺らぐ」という。安倍晋三元首相(故人)、ドナルド・トランプ米大統領にも共通する問題だ。

 英シンクタンク、レゾリューション・ファンデーションとLSEの報告書『停滞を終わらせる』は「市場がトラス氏による『成長』のナラティブを信じなかった最大の理由は英国がすでに15年以上続く『毒性のある停滞』の中にあったからだ」と分析する。

 それによると、2008年の世界金融危機以降、英国の生産性向上はほぼ止まり、投資率もG7の中でも最低水準という「生産性パズル」に陥っている。市場は「過去15年も投資が起きなかった構造的欠陥があるのに、減税だけで成長が急加速するはずがない」と見切った。