竹中工務店が月面基地の検討を始めたのはなぜか?
佐々木:メンタル面の話になってしまいますが、熱量だと思います。宇宙がもともと好きだった、興味があったということももちろんありますが、「宇宙に本気に取り組もう」という気持ちの強さに尽きると感じています。
書籍の中で、スーパーゼネコンの竹中工務店に勤める一級建築士・佐藤達保(さとう・たつほ)さんと田中匠(たなか・しょう)さんを紹介しました。
きっかけは、佐藤さんが2022年のJAXA宇宙飛行士選抜試験にチャレンジしたことです。宇宙飛行士にはなれませんでしたが、佐藤さんの中で自分の仕事と宇宙を掛け合わせたらどうなるだろうという純粋な疑問が生まれました。
そこで、佐藤さんたちは社内コンペで月面建築のビジネスモデルを提案。こちらも採択には至りませんでしたが、社内で仲間を集めて、2023年に社内で部署横断型タスクフォース「TSX(Takenaka Space Exploration)」を発足させました。
──TSXではどのようなことをしているのでしょうか。
佐々木:主に月面基地の検討を進めています。月面と言っても、半分は月の地下にあります。月の地下には、かつて溶岩が流れていた空洞が存在していることが明らかになっています。
佐藤さんらの月面基地構想は「基地をどこに設置するのが良いのか」という発想からスタートしています。地球上であれば、なんとなく日当たりがいいほうが良いという考え方になりますが、月では昼夜の気温差が300度に達します。さらに、1日は24時間ではなく約708時間です。人間の体内時計では対応できません。
そこで白羽の矢が立ったのが、温度管理がしやすく光の照射量の調節が可能な地下空洞です。
東京ドームを手掛けた竹中工務店らしいドーム状の居住モジュールが地下空洞内部に並び、そこから地上へ貫通するかたちで150メートル級の塔が伸びる。この塔は通信アンテナやエネルギー供給の役割を果たします。東京タワーを手掛けた竹中工務店の発想が活かされています。
撮影:株式会社竹中工務店
──自分の仕事と宇宙を、うまくつなぎ合わせた事例ですね。