マドゥロ拘束作戦の裏でカラカス停電が起きていた(筆者がChatGPTで生成)
(小林 啓倫:経営コンサルタント)
2010年代、米国が展開した「スタックスネット(Stuxnet)」と呼ばれるサイバー攻撃手法が注目を集めた。これは一種のマルウェア(コンピューターに不具合を起こさせるソフトウェアの総称)で、特定の施設にある機器を稼働停止に追い込むように設計されていた。その機器とは、イランの核燃料濃縮施設に設置された遠心分離機である。
2000年代、イランに秘密の核燃料濃縮施設が存在することが発覚し、同国の核兵器開発疑惑が深刻化した。米国はイランを「悪の枢軸」と名指しし、国連安保理を通じた経済制裁で外交的圧力を強化する一方、より効果的な手法でイランの核開発を遅らせることを検討していた。それがサイバー攻撃による、関連機器の無力化である。
スタックスネットはインターネットから隔離された設備にもUSBメモリーなどを介して入り込めるよう設計されており、実際に2009年から2010年にかけて、現地の複数システムに侵入・作動し、ターゲットとした機器の損耗や停止を招いたとされる。
2010年代に入ってから、セキュリティ各社の解析でこの手口が明らかになり、物理的破壊を伴うマルウェアの先例として各国が警戒を強めた。米国政府は公式には認めていないが、米国主導の作戦であったと認識されている。
このように米国は10年以上前から、インフラなど重要施設へのサイバー攻撃を、軍事攻撃に代わるものとして研究してきた。そしてつい最近、米国が他国のインフラをサイバー攻撃したと見られる事例が発生している。それは2026年1月の、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領拘束事件の最中に起きた、カラカスの大規模停電である。